望潮亭通信

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国旗の意味

 米国の国旗である星条旗は、左上にある白星が州の数(現在は50)を示し、赤白13本の横帯は独立当初の13州を示す。人々は星条旗に向かって右手を胸に当て「忠誠の誓い」を唱えることが慣習となった。誓いの文言は「私はアメリカ合衆国国旗と、それが象徴する、万民のための自由と正義を備えた、神の下の分割すべからざる一国家である共和国に忠誠を誓います」などと訳される。

 星条旗は米国の国家統合の理念を示すものであり、米国の人々の自由と正義の確保と分割せずに統一を保つこと、さらに共和国であることを人々が星条旗に向かって誓う。つまり、星条旗は米国の自由と正義と統一と共和国の象徴であり、単なる国家の象徴ではない。国家形成の理念は国により様々だが、何らかの理念を国旗で表現していることが多い。

 フランス国旗は青・白・赤の三色旗(トリコロール)で「自由・平等・博愛」を表し、イタリア国旗は緑・白・赤で「国土と自由、雪と正義や平等、愛国者の血と情熱や博愛」を表すとされる。ドイツ国旗は3色で横分割され、黒・赤・黄(金)は「勤勉・情熱・名誉」を表し、オランダ国旗も横三分割で、赤・白・青は「国民の勇気、神への信仰心、祖国への忠誠心」を表すとされる。

 ロシア国旗も横三分割で、白・青・赤は「高貴と率直と白ロシア人、名誉と純潔性と小ロシア人、愛と勇気と大ロシア人」を表す。ソ連時代には「鎌と槌の赤旗」が国旗だったが、ロシア連邦の成立で帝国時代の「白・青・赤」の三色旗が復活した。ちなみにソ連の国旗の鎌は労働者階級、槌は農民、赤旗社会主義共産主義を表すとされる。

 中国国旗は「五星紅旗」と呼ばれ、赤は共産主義や革命、大きな星は中国共産党、小さな4星は労働者、農民、知識人、愛国的資本家を表す。イギリス国旗は、イングランドスコットランドアイルランドそれぞれの十字架を組み合わせたもので連合王国であることを表す。バングラデシュ国旗は緑地に赤丸で、緑は国の活力と若さと国土、赤丸は太陽と独立のために流された血を象徴する。

 北欧のフィンランドの国旗は白地に青の十字架で、青は湖沼と澄んだ空、白は清らかな雪を象徴し、スウェーデン国旗は青地に黄の十字架で、青は湖、黄は黄金または輝く太陽を象徴し、ノルウェー国旗は赤字に白と青の十字架で、赤は情熱、青は海と国土を表すとされる。3国に共通するのは旧宗主国デンマークの国旗をベースにしていること。デンマーク国旗は赤字に白の十字架で、赤は祖国愛、白はキリスト教への信仰を表し、世界最古の国旗ともされる。

 日本国旗は、中央の赤丸が太陽、紅白の色がめでたさを表すとの解釈が多いようだが、公式な説明はない。日本の国家形成に理念があったなら、日の丸に何らかの意味が付与されていたのだろうが、明治維新に現代でも通用する普遍的な価値観(理念)は乏しく、国旗として法制化する時にも、何らかの理念を国旗で象徴させようとの試みはなかった。理念なき国家には理念なき国旗がふさわしい。