望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

胸に手を当てて君が代を聞く

タマ「なんで、日の丸を仰ぎ、君が代を聞く時に近ごろ、日本のおエライさんは胸に手を当てるようになったのだろう?」

ミケ「アメリカに倣ったのさ」

タマ「胸に手を当てるなんて格好は、日本の伝統にはない。あんなアメリカの猿真似をして恥ずかしいとは思わんのかね、日本のおエライさんは」

ミケ「日本の伝統なんてものの中に、そもそも国旗も国歌もない。明治維新の後、欧州をモデルに近代国家としての日本をつくったときに、国旗も国歌を制定したのさ。だから国旗や国歌に対する態度も輸入もので間に合わせた」

タマ「今はアメリカが日本の手本だから、アメリカ流に、胸に手を当ててみるということか? なんだか日本の保守主義者は情けないな。日本の伝統云々と言挙げしながら、その実態が欧米の猿真似とはなあ」

ミケ「保守主義国家主義の区別が、日本では曖昧なのさ。思想の立脚点をどこに置くかという自己認識が曖昧だから、自己正当化のために保守主義国家主義もごちゃまぜにして平気でいられるのさ」

タマ「欧米の猿真似だから、自然にしとけば誰も“敬意”を表さないから、国旗も国歌も強制しなければならないわけか。ただ、星条旗は『自由と正義を有し、分割されざる国』の象徴であるとアメリカではされる。つまり星条旗アメリカの自由と正義と統合の象徴である。どうせアメリカの猿真似をするなら、そこも真似してほしかったな。日の丸は何を象徴しているのか、定義すべきだった」

ミケ「猿真似好きの日本の政治家でも、そんなことだけは絶対やらないさ。国民に日の丸を仰ぎ見させる時に、いちいち自由や正義を意識させてはまずいからな。政治家の決めたことに国民は『しかたがない』と従順に従っていればいいという国にしたいんだろうからさ」

タマ「いっそのこと、胸に手を当てる代わりに、胸の前で両手を合わせればいいのに」