2004年10月28日の園遊会で、都教育委員の米長邦雄が「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と天皇に言った。それに対し、天皇は「強制になるというものではないのが望ましい」と述べ、米長は「素晴らしいお言葉をいただき、ありがとうございます」と答えた。陛下は日の丸・君が代の強制を望んではおられないーのだ。
自分の発言の方向性が否定され、米長は全くのピエロを演じた。だいたい米長が教育委員に値する人物なのか疑問だが、まあ、教育に対する見識ではなく官僚の言うままに動くイエスマンだから教育委員に選ばれたことはバレバレ。そんな人物が子供達に日の丸・君が代を強制する……日本という国が衰退するのも、むべなるかなと思わせるような出来事である。
教育委員会は学校で日の丸・君が代の強制を進め、教師たちに対する締め付けを強めてきた。その“効果”があってか、「次は生徒だ」と強制の対象を拡大しようとしていた矢先に、この天皇の“釘さし”発言。
園遊会に招待された米長は官僚らと打ち合わせ、意図的にあの発言を行ったはずだ。おそらく天皇は曖昧な答えしかしないと踏み、それを今後の日の丸・君が代の強制に利用しようとしたのだろう。しかし、天皇は“国家主義の暴走”に懸念を示した。天皇の権威を利用した軍部や国家主義者らが日本に大災難をもたらした歴史を天皇は忘れてはいない。
ここから見えてくるのは、(1)日本の国家主義者らが天皇を利用しようと露骨に動き始めた、(2)彼らが忠誠を誓うのは国家権力に対してであり、天皇自身の意向など考慮しない、(3)天皇は民主主義的価値観を持っている(戦前のような過ちを天皇が繰り返すと、天皇制は終ってしまう)、(4)棋士であった米長は政治的には、先を読む能力が乏しかった。