望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

向うが上手


金太郎「日本の外交はどうして後手後手に回るのだろうか? 歯がゆい」


阿R 「受け身だからさ。対米従属という枠組みの中で、アメリカの機嫌を損ねないように振る舞うことが最優先課題となり、独自の外交戦略を持つことができなかった。米ソの世界分割支配という冷戦が終わった時に、日本はどう進むかという議論をしなければならなかった。あそこが対米従属から抜け出す唯一のチャンスだったのかもしれない」


金太郎「それじゃ、対米従属がずっと続くのか?」


阿R 「それが日本の選んだ道さ。国連常任理事国の件だって、例えば、国際平和を強くアピールして国連の調停機関としての機能強化を訴え、そのために日本が常任理事国として責任を果たすとでも立候補の弁を述べればまだしも、伝わってきたのは、多く金を出しているから常任理事国にさせろという主張だ。理念がない。さらに、ダメでも日本は金を出し続けると足元を見られているから、日本の主張にはまともに応じてもらえない」


金太郎「しかし、中国にも理念なんてない。民主主義も国際平和も国際強調も中国は持ち出せない。国内はどうなんだと問われたなら、中国は反論できないからな」


阿R 「中国人には理念は似合わない。現実的に生きてこそ中国人だ。へたに理念にかぶれると、大躍進や文化大革命のような結果になるからな」


金太郎「一つの中国というのは理念じゃないのか?」


阿R 「あれは国是。この言葉は台湾に対してだけ向けられているように思われているが、実はチベット東トルキスタン内モンゴルなど周辺民族にも向けられた言葉だ」


金太郎「理念のない2カ国がアジアで主導権争いをしているというわけか。それで、主導権を取るのはどっちだ?」


阿R 「中国さ。何故か? 中国には日本外交の打つ手が見える。手の内を読まれた方が外交では負けだ」


金太郎「日本国内に中国のスパイが大量に潜り込んでいるとでもいうのか?」


阿R 「そうじゃない。日本は対米従属から脱することができないから、アメリカの意向に反した外交はできない。それと、日本の政治家はマスコミ、世論に流されるから、対北朝鮮外交に見られるように打つ手が制約される。つまり、日本外交の手の内は丸見え。これじゃ、外交で勝てるわけがない」


金太郎「手持ちのカードが相手に読まれていては日本外交の成果が上がるはずもない。そうして日本の人々のフラストレーションだけが高まる。なんだか日本の外交って人々の精神的な健康に悪そうだな」