望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

最強の武器

 軍事優先の北朝鮮の核爆弾が、周辺国にとっての現実的脅威となるためには運搬手段が確保されていることが必要だ。しかし、戦闘機などに装填できるほどの小型化能力は北朝鮮にはまだない。そうなるとミサイルということになり、北朝鮮は各種のミサイルの開発に熱心だ。

 北朝鮮が核爆弾を使用したなら、その時はアメリカと全面戦争になる(なっている)可能性が高い。北朝鮮核兵器を使えば当然、アメリカも使う。北朝鮮が核を使用した時が北朝鮮の敗北、崩壊の時である。つまり核爆弾は北朝鮮の体制維持には役立たない。

 北朝鮮はなぜ核爆弾を持つか。一つには、先制攻撃用ではなく防衛用。「攻められたら核で反撃するぞ」との身構え。二つには、交渉用。核を持つことで「アメリカと対等の立場になれる」と考えている。三つには、イメージシンボル。経済的にも国際政治的にも韓国に大きく後れをとったが、核保有により軍事的には韓国を上回っているとのイメージが形成できる。

 現在の北朝鮮の最優先課題は体制維持である。経済が疲弊し、人々が餓えている。だからこそ強固に体制維持をしなければ、金一族とそれを支える支配層の特権は維持できない。

 北朝鮮が核爆弾を保有したとして、それは「使えない兵器」である。それを分かっていながら韓国、日本、米国が北朝鮮と交渉を求めるのはなぜか。それは、核爆弾以上の現実的脅威が北朝鮮にはあるからだ。それは、北朝鮮体制崩壊

 二千数百万人の多くが餓えている国が崩壊したなら、人々を救うために韓国を中心に日本、中国などは巨額の支援をせざるを得まい。また、人々が支援が届くのを静かに待って北朝鮮の国内にとどまっているーはずもなく、韓国や中国など周辺国に逃れ出てくる。周辺国の経済的負担は膨大である。

 つまり、北朝鮮の現実的な最強の“武器”は核などではなく、皮肉にも北朝鮮自身の体制崩壊なのである。