望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

泣いた小泉

 こんなコラムを2004年に書いていました。

事情通「公衆の面前で小泉首相が泣いたそうだ」

半可通「そうか。少し遅れたけど、ヘリ墜落の現場に行って、沖縄の人々が置かれている立場を実際に見て、日本政府の怠慢に恥じ入って泣いたか。沖縄の米軍基地を縮小するには、日本政府が先頭に立って動かなければ話は進まないからな。そうか、やっと小泉首相もブッシュのパシリから脱する気になったか。少しは成長したのかな」

事情通「早合点するな。小泉首相が泣いたのはブラジルのサンパウロでだ」

半可通「サンパウロ?」

事情通「訪問を歓迎して集まった日系ブラジル人らを前に、『言葉も気候も違う中で、どれだけ苦労されたか』と感極まって声を詰まらせ、涙を流したそうだ」

半可通「また、情緒に訴えるという人気取りか」

事情通「ブラジルに行って泣くぐらいなら、言葉も気候も違わない日本の中で、どれだけ苦労している人々がいるか、きちんと見て日本で泣けと言いたい」

半可通「一国の最高権力者が公衆の面前で泣く=感情的に取り乱すというのは、危ないなあ。自衛隊の最高指揮官でもある人物が情緒的に不安定であるというのは、言葉は悪いが、キチ●●に刃物そのものだ。情緒に流され、感情に駆られて武装組織=自衛隊に命令を下しかねない。『なにぃ、北朝鮮がミサイルを打った? よおし、自衛隊で仕返しだ』なんて、やりそうだ」

事情通「軍の最高指揮官でもあるポストには、常に冷静で理性的である人物像が求められる。自衛隊が軍隊だという認識を持っているなら、最高指揮官には情緒的、感情的人物はふさわしくないという世界的常識をわきまえて、ふるまってほしいものだ」

半可通「さっそくアメリカのジャーナリズムには皮肉られているらしいが、日本のマスコミはどう扱うのかな」

事情通「トピックスとして扱って終りさ。武装組織の最高指揮官が情緒的、感情的であって、いいのか、大丈夫なのか…なんて問題意識は出て来そうにない」

半可通「そうだな、日本のマスコミも日常的にかなり情緒的な報道をしているからな。情緒に訴えなきゃ大衆にうけないとでも思い込んでいるのかもしれない」

事情通「こうなると、大衆うけ狙いで、泣くことを売り物にする政治家も現れそうだな」