望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

夏だけの短期移住

 関東から西日本各地で6月中から最高気温が35度を上回る猛暑日となった。梅雨明けが早く、太平洋高気圧に覆われる日が続き、もう真夏になった(梅雨前線は押し上げられ、北海道などでは雨の日が続いた)。熱中症で搬送される人も多く、秋の到来が平年並みとすると今年は猛暑に耐える日々が長く続く。

 北海道でも気温は年々上がる傾向にあり、内陸部などでは東京などと同様の猛暑日も珍しくなくなったが、湿度は低く、夕方には急に気温が下がりやすいので、東京などよりは過ごしやすい。そこで、例えば首都圏在住者から「夏の間だけ、北海道に移住したい」などの声が上がったりする。

 「夏の間だけ」というのは、冬の寒さと降雪を懸念しているのだろう。猛暑に加え集中豪雨や台風禍など暮らしにくさに通じる気象現象は全国でも起きるが、寒さや降雪は数カ月続くので、寒さや降雪に精神的ストレスを感じる人が冬の北海道で暮らすことを嫌うのは当然か。猛暑にストレスを感じる人は多いだろうが、猛暑が日本全国でフツーになりつつあるので「逃げ場」はない。

 夏は北海道で暮らし、冬は東京などで暮らすという生活を実現するには相応のコストがかかる。夏の間だけ賃貸できる家屋があれば北海道への短期移住者が増えるかもしれないが、そんな短期移住は毎日出社しなければならない会社員には不可能だ。リモートワークが定着している会社に勤める人なら、北海道への短期移住は可能かもしれない。

 リモートワークが定着している会社に勤める人なら、北海道に移住して「冬の間だけ」東京などで暮らすという生活が可能だ。東京で暮らす人なら、軽井沢に別荘を買うより北海道で住宅を買うほうが安上がりだし、行き来に要する時間も空路を使えば大差はない。食材の豊かさなどを考えると移住して北海道を本拠とする魅力は多い。

 猛暑を避けて夏の間だけでも北海道で暮らす人が増えれば、東京などで夏のクーラー使用が減り、省エネに貢献する。「家の作りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ、わろき住居は堪へ難き事なり」とは兼好法師の論だが、クーラーなしで東京などでの生活はもう成り立たないだろうから、居住人数が減ることが省エネに貢献する。

 北海道では人口減少が続いている(札幌市は人口増加で一極集中が進む)。パンデミック対策として普及したリモートワークが多くの企業で定着するなら、北海道などにとっては移住者を誘致するチャンスとなる。そのためには①光回線網を密に整備、②短期間の移住者向けの住宅を用意、③短期間の移住者の子供向けの教育環境を整備ーなどが必要となる。