望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





節電で標語

 2011年の夏は一味違った。「だって原発が止められてるんだもん」と東電は停電をちらつかせ、人々は節電を余儀なくされ、クーラーを我慢して熱中症になる人が続出した。それでも節電に人々が協力したのは「非常時」の感覚なのかも。



 非常時といえば先の戦時中には様々な標語が作られた。そんな標語を参考に、猛暑の節電の夏にふさわしい節電版「非常時」標語を作ってみた。カッコ内は元ネタの戦時中の標語。



 「暑がりません、この夏は」(欲しがりません、勝つまでは)……心頭滅却すれば火もまた涼しというわけか、精神力で暑さを克服する。「鬼畜冷房」(鬼畜米英)……冷房なんて西洋文明の発想だから唾棄すべきものだと決別し、自然に調和して生きるのが日本人なのだから、猛暑の時には猛暑を楽しむべし。



 「冷房は敵だ」(贅沢は敵だ)……暑くて、ついクーラーのスイッチに手が伸びそうな時に唱えると、精神がしゃんとして冷房なしでも持ちこたえることができるかも。冷房は素敵だなんて間違えても言ってはならない? 「止めよ冷やすな」(生めよ殖やせよ)……冷房が効きすぎている飲食店、事務所などを見つけたら、冷房を止めるように注意したりして。



 「進め一億節電だ」(進め一億火の玉だ)……自分だけが暑いのではなく、一億皆が暑いのだと思えば元気が出て、皆で節電しようと気持ちが引き締まるかも。「八方一暑」(八絋一宇)……北海道や軽井沢など高地に行けば涼しいのかもしれないが、皆が簡単に行くことができるわけでもなし。どこもかしこも暑いと覚悟を決める。



 「街灯不滅」(神州不滅)……節電で消灯した街灯が増えたが、点灯している街灯もあるということ。「一億決心」(一億一心)……日本人皆で節電を決心したんだとの雰囲気づくりを行う。「電子レンジ玉砕」(一億玉砕)……節電のため電子レンジの使用を控える家庭が増え、新品の売れ行きが鈍った?



 「うちらもガマン」(撃ちてし止まむ)……節電に加わる関西のおばちゃんもいて、ガマンで夏を乗り切る。「消すんだ脱ぐんだ耐えるんだ」(撃つんだ勝つんだ貯めるんだ)……来客がない事務所では超スーパークールビズということで、冷房をガマンして、かなりのラフスタイルでの勤務もOKだったりして。



 ついでに日露戦争の頃の言葉を借りると、原子力ムラの関係者は「原発の興廃、この節電にあり」と見ていたりしてね。