望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ミサイルシュート


 こんなコラムを2006年に書いていました。

アナウンサー「さあ、ノース・パシフィック・カップ北太平洋での覇権をかけての決勝戦が始まりました。対戦するのは、圧倒的な物量で勝ち上がってきたアメリカと、中ロ韓から支えてもらってきた北朝鮮です。解説の三浦さん、どんな試合になりそうですか」
三浦    「すごい試合になりそうですね、なにしろ決勝戦ですから。まあアメリカの勝ちは間違いないでしょう。ただ、アメリカは同時に、他の競技場でイラクやイランも相手にしていますので選手層は手薄になっています。そこを北朝鮮がどう突くかが見所でしょう」
アナウンサー「さっそく北朝鮮が脅しをかけていますね。ミサイルシュートを撃つぞ撃つぞと。これは効くのでしょうか」
三浦    「さあ、どうでしょう。何度も同じ手を使っていますからね。効かないでしょう」
アナウンサー「でも、ミサイルシュートが間違って観客席に飛び込んできたら、怖いですよ。ミサイルシュートを持ち出した北朝鮮に観客席からブーイングが起こっています」
三浦    「今はミサイルシュートしか北朝鮮には攻め手がないんですね。偽ドルシュートも覚醒剤シュート、武器輸出シュートなど北朝鮮独自の戦法が封じ込められてしまったので、生き残るためには、ボクラは危険な存在なんだとコワモテで開き直るしかないんでしょう」
アナウンサー「あ、撃ちました。あれあれ、1発だけかと思っていたら、続けて撃ちました。7発も撃ちました」
三浦    「おお、すげえ。闇夜の透かしっ屁みたいなプレイだ。あれ、大きく外しました」
アナウンサー「アメリカは落ち着いています」
三浦    「弾道ミサイルシュートをアメリカ陣地まで飛ばせば、アメリカも本気になったのでしょうが、北朝鮮にはそこまでの覚悟がなかったんですね。アメリカ陣地から遠く離れた、見当違いの方向に中距離ミサイルシュートを続けて撃ちました。アメリカを本気で怒らせたくはないが、アメリカと互角なボクラを世界に見せつけ、この試合を続けたいと北朝鮮は言っているんですね」
アナウンサー「北朝鮮は勝ちたいとは思っていないのですか」
三浦    「北朝鮮アメリカに勝てると思っている人は世界中に1人もいないでしょう。といって、北朝鮮が負けて崩壊してしまっては、周囲の国が大迷惑です。ドイツ統一みたいに韓国が北朝鮮を引き受けるのならともかく、フセイン後のイラクみたいに、周辺国のワル連中の治外法権の寄り合い場になってしまえば傍迷惑です」
アナウンサー「観客席は大騒ぎしているのに、ピッチ上ではあまり動きが見えません」
三浦    「もう北朝鮮には、何発かミサイルシュートを続けるくらいしか手は残っていませんね。アメリカは自陣に弾道ミサイルシュートを撃ち込まれてから動けばいいと見ているのでしょう。妥協もしないし、対話もしない。ボールを回させてやっているんですね」
アナウンサー「この試合の見せ場はもう終わったということですか」
三浦    「さあ、どうですかね。なにしろ突拍子もない手を出して来るので知られている北朝鮮ですから。PK戦までもつれ込むかもしれませんよ」