望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

平均気温が上がったら

 日本列島は弓形の形をしていて、西日本から関東あたりまでが緩い右上がりで、関東から北海道までは急に立ち上がるようになっている。2022年の桜の開花予想日は、九州・四国が3月の中下旬、中国・近畿・東海が3月下旬(高山は4月上旬)、関東・甲信が3月下旬から4月上旬、北陸が3月下旬から4月上旬、東北が4月上中旬(角館は4月下旬)、北海道は4月下旬から5月上旬だ。

 大まかに見て、西日本から関東までが3月中に開花し、東北は4月に入ってから開花、北海道は4月下旬以降に順次開花する(東海や北陸、甲信の標高が高い地方では4月に入ってから開花する)。日本列島が弓形で逆L字形をしていることから、西日本から関東あたりまでは似たような気候だと想像できる。

 年間の平均気温(2020年)を見ると、九州は17度台(鹿児島は19度台、宮崎は18度台、沖縄は23度台)、四国は17度台、中国は15〜16度台(広島は17度台)、近畿・中部は16〜17度台、北陸は14〜15度台、甲信は山梨が15度台、長野が13度台。南関東は16〜17度台だが、北関東は15度台、東北は福島が14度台だが他の県は11〜13度台、北海道は10度台。西日本から南関東まではほぼ17度台前後だが、北関東から北海道まで平均気温が次第に下がるのは日本列島の形状からも想像できる通りだ。

 気候変動で地球が温暖化しているとの危機感が世界各国で共有され、気温上昇を2度未満に抑えることを目指していたが、最近では1.5度以下に抑えることが目標として掲げられている。地球温暖化は現実で、今後も気温上昇が続くのは避けることができないとの認識に基づいて、気温の上昇幅を抑えることが各国の努力目標となった。

 さて、平均気温が2度上昇すると、どんな変化があるだろうか。日本に当てはめると、西日本から南関東までの平均気温が19度台になり、鹿児島あたりと同じような気候環境になると予想される。北関東は17度台になり、東北は13〜15度台、北海道は12度台になる。数字だけでは小さな変化に見えるが、例えば、海水温の上昇によりサケやサンマ、イカ、ブリなどの回遊域が変化することは漁獲量に表れている。

 平均気温が上昇するだけなら、つい「暖かな日が増えるだけ」と簡単に受け止めたりするが、気象現象は複雑だ。例えば、地球のどこかで水分の蒸発量が増えると、どのような影響を周囲に及ぼし、それが気球規模の気象にどのような影響を与えるか。変数が多すぎて予想の正確さには限度がある。気温の上昇は植生にも影響を与えるが、植生の変化と光合成の関係など未知数だ。

 さらに日本では偏西風の蛇行の影響が大きく、それが低気圧や高気圧の動きとなって現れる。だが、偏西風の蛇行と温暖化の関係の説明は乏しいなど、温暖化の進行と日本における環境変化は仮説段階だ。温室効果ガスの排出削減が各国の計画通りに行われたとしても、平均気温が抑制できるのかどうか不明なのが現実だろう。平均気温の上昇が程度の差はあれ今後も続くとするなら、変化には対応するしかない。