望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





氷河は常に崩れている

 気候変動(日本では地球温暖化との使い分けがアイマイ。気候変動と地球温暖化はイコールではなく、地球寒冷化も気候変動に含まれる)は、特別なものではない。地球環境は常に変化して来たし、常に変化している。大きな地震が続いたが、地表(海底も)が常に変化しているように、気候も常に変化しているので、現在の環境を「基準」とすべき理由は何もない。

 CO2の排出増加で地球温暖化が進行し、氷河の融解量が増え、海面上昇が起きる……というストーリーの視覚的アピールとして、海に流れ込む氷河が崩壊する映像がよく使われる。でも、待てよ。いつから氷河は、海に流れ込む時に崩壊するようになったのだろうか。

 傾斜地にある氷河は、少しずつ常に動いている。大昔から、海に流れ込む氷河は崩壊したり、分離して氷山になったりしていた。海に流れ込む時に崩壊するのは、最近始まったことではない。それなのに、崩壊する氷河の映像を使うのは、地球温暖化に対する危機意識が、実はイメージにより操作される部分が大きいことを示している。

 氷河と地球温暖化の関係を論じるならば、地球の平均気温が○度上昇すると地表の氷河の総量が○%減少するというような、客観的な観測データが必要だが、そんなデータは誰も持っていない。だから、危機感を煽りたい連中は安心して、崩壊する氷河の映像を使うことができる。

 何らかの理由で氷河の溶解量が増えたとしても、海面上昇にはつながらないという見方がある。海洋面積は地表の7割を占めるが、氷河の融解量が多少増えたぐらいでは水位には影響ないという。ただし、南極大陸グリーンランドの氷床は膨大で、それらが融解すると海面がメートル単位で上昇するとされるが、大規模な溶解の兆候はないという。温暖化論議では、氷河よりも氷床を重視すべきなんだな。

 崩壊する氷河や餓死する白クマ、水没する島嶼国などの映像は、イメージ操作が目的だと見たほうがいいようだ。地球温暖化への過剰な危機意識を捨て、冷静かつ客観的に気候変動について考えるところから、真に有効な対策が出て来るはずだ。