望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

急発達する低気圧

 2014年12月中旬に、日本海を低気圧が急速に発展しながら東進し、太平洋側を北上した低気圧と北海道付近で合体、台風並みの猛烈な低気圧になった。24時間で50ヘクトパスカル(hPa)くらい中心気圧が下がって、948hPaにも達した。ちなみに10月に大雨と暴風で死者5人などの被害を出した台風18号浜松市付近に上陸したころ965hPaだった。



 この猛烈に発達した低気圧によって道東を中心に猛吹雪となり、大雪や強風(根室市で瞬間最大風速39.9メートル。台風18号では石廊崎で32.2メートルだった)に加えて、太平洋側やオホーツク側で高潮が発生し、市街地が冠水、床上浸水などの被害も発生した。



 高潮が発生したのは、低気圧が急速に発達して気圧が下がったことで吸い上げ効果が生じ、海水面が上昇したことと、低気圧による強風が陸に向かう風向きになって波が吹き寄せられたためという。気圧が1hPa下がれば海面は1センチ上昇するといい、そこに強風が加われば、うねりが一層大きくなるという。厳寒の冬季に浸水被害は過酷だ。



 この低気圧に対して札幌管区気象台は「まったく見通しのきかない猛吹雪や吹きだまりなどにより、車の運転が困難になるなど交通機関に大きな影響が出る恐れがある」と厳重な警戒を呼び掛け、網走地方気象台は「数年に1度の猛吹雪」が起こる恐れがあるとして、外出を控えるよう呼び掛けた。気象庁は「これだけ急に発達するのは数年に一度。見通しが全くきかない猛吹雪になる恐れがある」とし、外出を控えるよう呼びかけた。



 数年に一度というのは、珍しい気象現象ではない。たまに遭遇するといった気象現象だから、子供の頃から何度も経験するだろうし、大人になっても何回もの経験があるだろう。だが、この低気圧と温暖化を結びつけて解釈する動きが散見された。といっても詳しいメカニズムの説明はなく、何でも温暖化のせいにして「異常気象」と断じて深刻ぶってみせるスタイルだったりする。



 研究者によると、日本を含む極東域における冬季は、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧という西高東低の気圧配置になり、シベリア上の冷たい空気を東アジアへ吹き出す。その冷たく乾いた空気が、日本海で大量の水蒸気を供給されると、本州や北海道の日本海側に雪を降らせる。シベリア高気圧が強まると、寒気の吹き出しも強まる。



 おそらく、偏西風が日本付近で大きく南に蛇行しているときに、日本付近を通過した低気圧が北海道付近で動きが鈍くなって停滞し、そこでシベリア高気圧や太平洋高気圧からの空気を引き込むことによって、急速に発達するのだろう。北米大陸大寒波をもたらしたのも、偏西風の南側への蛇行であったことを考えずあわせると、「異常気象だ」「温暖化のせいだ」などと言い立てるより、偏西風と気象現象の関係を考慮した方がいい。