望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

表示を見てる?

 牛肉コロッケと謳いながら実は豚肉で代用していたことが発覚し、加工食品不信が高まったのが07年。中国産の悪質な加工食品の例を見ると、ミートホープの場合は、牛と豚の違いだけ、身体に有害なものを混ぜていなかっただけマシかなんて、つい思いそうになったりして。


 牛肉コロッケ偽装事件は、牛か豚かだけが問われたのではない。加工食品は、いわば一種のブラックボックス、消費者は表示を信じるしかない。その表示がいい加減だった。つまり加工食品に対する不信感がかき立てられた。ミートホープ社社長の当初からの一連の対応は、「この人物は信用するに足りるか」「誠意はあるか」などの疑問に「信用できない」と示すものだった。その後も杜撰な製造の実態が暴露され、様々な肉を代用し、消費期限切れのものも再活用し、あげくは雨水さえ使っていたことが明らかになった。


 使用している原材料を全て表示し、原産地等も正確に表示するなど、食品の表示をいくら詳しくするよう義務づけても、確信犯として誤摩かそうとする者にとっては、効果はあるまい。せいぜいがラベルだけの張り替えで対応して、おしまいとなってしまう。


 中国内では、危ない食品が流通していると伝えられ、残留農薬の野菜はもとより、人体に有害な物質を混入した食品もあり、食品中毒による死亡例も珍しくないという。政府は何をしていると日本では行政による取り締まりを求める声が高まるのだろうが、行政なんて金次第でどうにでもなるとも伝えられる中国では、消費者が自衛策を講じるしかない。といっても、野菜の残留農薬なら徹底して洗うことで、いくらかは減らすことができるかもしれないが、パッケージされた加工食品では自衛策にも限度がある。現実的に見て、消費者が加工食品の偽装や有害物混入を見破ることは困難だろう。


 牛肉コロッケという商品名を消費者は必ず見ているだろうが、裏側の表示まで見る消費者はどれくらいいるのか。日本の店頭で売られているものは“まとも”なものと信じ、表示をいちいち見ずに買っている人が大半に違いない。一方で、ごまかす気になれば、今回の例で明らかなように、幾らでも表示は誤摩かすことができるのだとしたら、買う時に表示をいくらチェックしようと、騙される時には騙される。


 ひところ日本で流行った自己責任論でいうと、騙される消費者が悪いという声がどこからか聞こえてきそうなものだが、こと我が身に関わることになると自己責任論は都合よく忘れられる。金儲けのためには手段を選ばない資本主義の中にある中国では、消費者は、それこそ自己責任で自衛するしかない。中国よりは進んだ資本主義の日本では、消費者は、やっぱり自己責任で自衛するしかない。

 日本の加工食品で表示が信用できないとなったら、自己防衛なんて消費者にはできまい。買わないのがせめもの自己防衛策かもしれないが、野菜の自給自足さえ誰にでもできることではない。つまりは、餓死するよりはと危険を承知で食べるしかないのが現実。