望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

どこでも、やってる?

 やっぱり、そうかと思ったね。2008年に発覚した船場吉兆の「使い回し」。どうせ客は気づかないだろうと、もったいない精神を発揮したのか、客の食べ残しを別の客に出していた。高い金を出して、誰かの食べ残しを喰わされていた客こそ、いい面の皮だ。



 しかしね、繊細な味覚を持ち合わせている客なんて、そんなに多くはないだろうし、それなりの加工をした「使い回し」は、食通の客だって気づかないかもしれない。高い金を払った分だけ客は、さすが船場吉兆の料理は素晴らしいなんて感心していたかもしれない。その感心の半分は、高い金を支払うことができる自分に対する賞賛かもしれないが。



 「高級店なのに」との批判の声があったが、それって、高級店でなければ「使い回し」は珍しくないってことか。コースなどで、手がつかないまま下げた料理があったとき、その料理は下げられた後、どうなるんだろうかとふと思ったことのある人はいるだろう。実際に別の客に出していた店があると知ると、なにやら疑わしくなってくる。



 新聞の投書欄に、飲食店で働いていた人が、「使い回し」は日常的に行われていたと暴露する投書が載っていた。さもありなんと不信感は募る。さらに、デパ地下に出店している鮮魚販売会社が消費期限の切れた刺身のうちタイ、ヒラメなど白身を翌日、「刺し盛」の一部に使って販売していたことが明らかとなった。けっこう人気があったというから、客は気づかなかったのね。そういえば赤福の消費期限切れの「再利用」品も客は気づかなかったらしい。



 発想を変えてみる。食べることが可能なものは、食べたらよろしい。


 食糧資源が限られている日本で、もったいない精神を全面発揮して、食べ残しを含め全ての食材を有効活用し、飲食店から出るゴミの量を減らし、ついでに利益率向上・儲けにもつながるという一石三鳥。もちろん客には、「再利用」であることを明示して割安で提供する。


 食品衛生法JAS法も改正して「使い回し」の基準を明確にし、衛生面の対策も万全とするなど環境整備が進んだ結果、食べ残しの「再利用」が広く行われるようになり、日本の食糧自給率はアップしたのでした……ってなるかも。



 やろうと思えば可能であるし、材料を節約できるし、儲けにもつながるだろうから、飲食業界では「使い回し」はそう珍しくないのかもしれない。客の自衛策は、寿司屋やラーメン店など調理場が見える店にすることか。個室は避けたほうがよさそうだ。個室に入ったなら、「使い回し」が運ばれてきても分からないぞ。