望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり




並ばないぞ

 

 行列が嫌いだ。せっかく店に来てあげた客がなんで、突っ立ったまま順番が来るのを待たなければいけないのかと腹が立ってくる。椅子などが用意してあって、座ってお待ち下さいというパターンも面倒だ。1人、2人と店内に入るたびに、座っていた連中は腰を浮かして移動する。うっかり居眠りもできないじゃないか。



 だから、有名ラーメン店には行ったことがない。いや1度だけ、仕事先の人の誘いで有名ラーメン店に行き、20分ほど並んで食べたことがあるが、な~んだという味だった。そこは雑誌などでよく取り上げられている店だそうで、まずくはないものの、スープも麺も大騒ぎするほどのものではなかった。店内には雑誌の切り抜きがべたべたと張ってあったっけ。



 1店だけの経験で、行列のできるラーメン店を全否定するつもりはないが、時間を要して並ぶ労力と、食べて得られる満足感が釣り合わない。例えば1時間並んで、アッと驚くような美味のラーメンに出合うことができるのならば、並ぶ甲斐もあるかもしれないが、スープも麺も材料は知れたもの、突然変異のようにチョーうまい味になるわけがない。ヘタに材料に凝りすぎると、味のバランスを壊すだけ。



 その店の味に比例して行列の長短ができるのなら、行列は店の味の便利な指標になるが、テレビや雑誌に取り上げられると行列が長くなったりする。行列の中のリピーターの割合が分からないというのも不便だ。うまいからまた来た人よりも、テレビや雑誌で見たから来てみたという人が多いのなら、行列は宣伝効果を示すものでしかない。



 フラッと入った中華料理屋で食べるものから、専門店で食べるものに変わったラーメン。でもね、本当に人気があるなら予約制にすればいいのに、行列を店の前に作らせて人気を演出している魂胆が透けて見え、興ざめだ。並んでなんか、やるものか。行列からラーメンを解放せよ!!




 行列ができる割烹料亭などないのに、ラーメンに行列がつきものなのは、ラーメンが気楽に食べに行くことができる日常食の位置付けで、高級感がないからだろう。別の言い方をすると、通行人相手の商売だから、客を待たせても平気なんだな。