望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

函館本線とバス転換

 JR北海道函館本線は、函館と旭川を札幌を経由して結ぶ全長458kmの幹線で、高速道路網の整備が北海道でも進むが、なお多くの人々や大量の貨物の輸送を担っている。ただし、長万部からニセコ〜小樽を経て札幌までの区間(山線)は急勾配が続き、単線であるため、特急や貨物列車は長万部〜札幌間は室蘭本線千歳線を経由する。

 北海道新幹線は札幌までの延伸を2030年度末に予定しているが、その開業時に並行在来線である函館〜長万部〜小樽間はJR北海道から分離される。新函館北斗駅まで北海道新幹線が開業したときに並行在来線江差線第三セクター道南いさりび鉄道に移行したように、並行在来線は事業運営形態を変えて存続するのが通例だった、

 だが、長万部からニセコ余市間はバス転換されることがほぼ決定し、余市〜小樽間は余市町が鉄道の存続を求めていることから、どうなるかは未定だ。函館〜長万部間は第三セクターに経営移管される見込みだという。函館〜長万部間をバス転換して鉄路をなくすと、北海道の農産物を本州に運ぶ貨物列車の運行ができなくなる(道南いさりび鉄道にも貨物列車が走る)。

 道南いさりび鉄道に変わった江差線は、函館と日本海側の江差木古内を経由して結んでいたが、江差木古内間は2014年に廃線となり、バス転換した。木古内からは松前まで伸びる松前線があったが、こちらは1988年に廃線となった。函館から江差松前には定期バスが走っており、路線バスを使った渡島半島1周が可能になっている。

 新幹線開業に伴って並行在来線は日本各地で第三セクターなどに経営移管したが、鉄道事業は存続した。それが可能になるには、①少なくない利用客が存在する、②地元の自治体などからの援助がある、③貨物列車の運行に鉄路の維持が不可欠ーなどの条件が必要だ。逆に言うと、利用客が少なく、貨物列車が走らず、地元自治体が援助に否定的なら、鉄路の維持は難しい。

 北海道の場合、冬には長い鉄路の除雪が必要になり、長い鉄路ではレールを支える道床の砕石の隙間に水(雪)が入って凍って膨張するので頻繁な点検や整備が欠かせず、鉄路の維持にコストがかかる。鉄路を地元自治体が維持管理すれば鉄道事業者は列車を走らせるだけで済むが、コストがかかる鉄路の維持を引き受ける自治体は現れてはいない。

 バス転換すると、バスは一般道を走行するので、除雪や道路維持などは行政が担い、事業者はバスを走らせるだけですむ。鉄道の利用客数をカバーする本数のバスを走らせることを担保するならバス転換は有力な選択肢になる。問題は、鉄路にはロマンがつきまとうことだ。つまり鉄道を維持することが情緒的に「正しい」とする人々が必ず存在する。