望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

1000年に1度

 トンガの海底火山の噴火の規模は「1000年に1度の出来事」とも言われる。この海底火山は高さが約1800m・幅20kmにもなるもので、小中規模の噴火を繰り返してきたが、海面下に直径5kmのカルデラがあり、その地下に900〜1000年かけてマグマが蓄積されて圧力が高まり今回の大規模な噴火に至ったという説だ。

 今回の噴火では噴煙は高さ20km〜30kmに上がり、噴煙の半径は40分後に200kmに達し、最大で350kmに広がったとされ、数km3から10km3くらいの噴出物が出て、トンガの島々に大量の火山灰を降らせた。噴火の爆発音(音は空気の振動)は約2400km離れたニュージーランドでも聞こえたといい、海底火山の海面に出ていた山頂(島)の大部分が失われた。

 噴火に伴って津波が発生し、「津波の高さは最大で15mになり、多くの島が被害を受けた」とトンガ政府。噴火に伴うカルデラの陥没や海底地滑りなどが津波を引き起こしたと見られ、太平洋の島々やチリ、米国西岸などでも津波が観測された。海底火山から噴出された巨大な噴煙(火山ガス)が海水を一気に押し広げたことも津波の要因の一つかもしれない。

 日本でも津波(海面潮位の変化)が観測されたが、それは海水の波動ではなく大気の波動が伝わったもので、海水の波動より速く伝わり、日本の気象庁は潮位の変化が観測されてから慌てて津波警報を出した。噴火による爆発的な噴煙の膨張が気圧を変化させ、大気の波動として世界に広がったとされる。

 今回の噴火による地球規模の環境変化が懸念されているが、過去には地球環境を激変させた超大規模な噴火が起きていた。東北大の研究グループによると、生物の大量絶滅は史上5回起き、恐竜が絶滅した6600万年前は天体衝突が原因だったが、ほかの4回は大噴火が原因だったという。

 約2億5000万年前のペルム紀末には、シベリアのバイカル湖の北で直径約2000kmに及ぶ大規模噴火が200万年以上続き、地球の海洋生物の96%と陸生生物の70%がこの時期の20万年足らずで絶滅したとの研究がある。大気中の温室効果ガス濃度が上昇して地球温暖化が進行し、大量絶滅したという。

 200年ほど前の1815年にはインドネシアのタンボラ山が大噴火を起こし、地球全体で気温低下をもたらし、農作物は不作となり、食糧不足から世界各地で飢饉となった。マントルが対流するプルームテクトニクスと地殻が移動するプレートテクトニクスによって、大規模噴火は今後も世界各地で起きる。今回の大規模噴火は地球史から見れば珍しくもない出来事だろうが、現生人類にとっては自然の巨大な力を実感した稀な出来事だ。