望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

トランプ氏の今

 現職の大統領だった頃のトランプ氏の言動は詳しく報じられ、ツイッター投稿の内容が毎日と言っていいぐらいニュースで取り上げられた。再選を果たせなかったトランプ氏が米国大統領ではなくなってから1年。トランプ氏の言動が久々に伝えられたが、相変わらず一方的な主張を行っていた。

 トランプ氏はアリゾナ州で大規模な集会を開き、集まった熱心な支持者に向けて、2020年米大統領選の勝者は自分だと持論を展開し、「我々は選挙に勝った。大差で勝った。彼らはこのままでは済まされない」、2020年の大統領選は「いかさまの選挙だった。至るところに証拠がある」と主張したという。

 トランプ氏は、1年前に起きた連邦議会占拠事件の真相を追及する下院特別委員会には選挙不正の調査を要求し、議会襲撃の民主党による責任追及を「政治犯の迫害」だとし、「米国の自由に対する前例なき攻撃だ」ともしたが、支持者らに議会へ向かうよう呼び掛けた自身の責任には触れなかったと報じられた。

 久々のトランプ語録をもう少し並べると、「ワシントンの政治家たちに我々の生活をコントロールさせるのはもうたくさんだ。命令にはうんざりだ」「過激な民主党は米国を共産主義国に変えたいと望んでいる」と断じ、投票権保護に向けた法案について「選挙不正のための法律だ」「共和党候補を当選させないための法律だ」とした。 

 バイデン大統領への攻撃は痛烈で、ロシアや北朝鮮の行動は「1年前には起きていなかった挑発行為だ」「彼らは米国をもはや恐れていない。我々に敬意を抱いていない」とし、米軍のアフガニスタン撤収をめぐる混乱は「米国の歴史上で最悪かつ最も不名誉な瞬間だった」とした。さらに経済政策や新型コロナウイルス対策などを「完全に失敗した」と批判し、「24年はさらに重要な年になる」と強調した。

 議会襲撃から1年の日にバイデン大統領は演説し、「この神聖な場所で民主主義が攻撃された」「米国の憲法は深刻な脅威にさらされた」とし、「何が真実で何がウソであるか明確にする必要がある。前大統領が2020年の選挙に関するウソを作り上げ、広めたというのが真実だ」「彼は敗北を受け入れられない」とトランプ氏を批判していた。

 さらにバイデン大統領は「米史上初めて、前大統領は選挙で負けただけなく、平和的な政権移行を阻止しようとした」とし、トランプ氏が議会占拠に対して「数時間にわたり何の行動も取らなかった」「前大統領と彼の支持者は、国民の投票や選挙を抑圧することが唯一の勝利への道と判断した」と批判、さらにトランプ氏は「権力に価値を置き、国益よりも利己を重視している」と糾弾した。

 共和党に有力な大統領候補が見当たらず、トランプ氏への支持が今なお高いことから共和党はトランプ氏を無視できない。トランプ氏に人々が期待するのは、言葉だけの民主主義などではなく、現状を変えることだ。確かにトランプ氏は大統領だった4年間に多くの政策変更(チェンジ)を行った。それらの政策変更は賛否が大きく分かれるものが多かったが、米国を変え世界を変えた。