え~、婉曲な言い回しってのがありまして。ズバリ言わずに、遠回しに言ったり、ほのめかして言ったりして、意のあるところを察してもらおうという言い方ですな。例えば、断りたいんだけれど、熱心に誘ってくれる相手の気を害さないように気を遣って、否定もせず肯定もせず、受け流すような言い回しでごまかすなんて場合ですな。
難しいのは、婉曲な言い方ってのが誉められるには、時と場所があるんですな。いつでも、そんな言い方が通用するというわけではないんで。相手によっては、えい、じれったい、はっきりしろいと怒り出す人もいそうで。
そこへ行くと、あちらさんはズバリ言うのがお好きなようで。だいぶ前の映画に「せっくす&ざ・してぃ~」というのがありました。訳すと「成功と街」。都会に憧れて東京に出て来た少女が、努力して幸運をつかみ成功するってストーリー……ではないんですね。舞台はニューヨークで、主人公は中年に差し掛かった女性4人。訳すと「性交と都市」?
セックスと題名にあるので、えげつない場面が多いのかと思うと、それほどじゃありません。セックスにオープンな女性たちが主人公ですが、自分のものとしてセックスを位置づけているので、ガンコなおじさんたちが嫌う自立したオンナの臭いもします。政治色はまったく出てきませんが。
98年から04年まで6シーズンにわたって放送されたTVシリーズの続編(後日談?)という位置づけでして。予備知識無しでは見るのが辛いかもと思ったのですが、映画の冒頭に簡単にパッパッと紹介されますので、なんとなく「世界」が垣間見えたような気がします。まあ、映画はそんなに深い話をしているわけではないので、予備知識無しでもOKかも。
映画ではテンポよく話が進み、ブランドものやファッションにあふれ、各自のゴージャスな生活が描かれる。愛があり、不倫があり、別れがあり、出産があり、仲直りがある。男達はそれぞれに女性に優しく真摯で、女性らの「わがまま」を受容してくれる。
けっ、都合のいいストーリーばかりだと感じながらも、最後まで飽きさせず引っ張る力がある。これは、女性の欲望を全肯定した映画だから、ある種の爽快感が漂っているのだと考えたが、違うね。欲望ではなく願望なんだ。女性の願望を全肯定した映画なんだな。だから、ブランドやファッション、ゴージャスな生活、優しく真摯な男性など、多くの女性にとっては現実感が薄くても、願望であるということで感覚を共有できるのだ。
この映画からブランドものやファッションを抜いて、下町の仲良しオバちゃん4人組を主人公に設定しても、面白いホームドラマができるかもしれない。ついでに団塊世代のリタイアおじさん4人組を主人公にしても、辛気くさくなりすぎなければ面白いものができる〜かな?