望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

エコという物語


白クマ  「エコを標榜する商品を買う消費者は、環境にいいことをやってるんだという満足感を買っている面が大きい。ある種の使命感というか自己満足というか、どちらにしても『意識の高い消費者』であることを自負しているはずだ」



ブルーギル「エコはいいことなんだと思い込んでいるから、ワキが甘くなるんだな。賢いフリをしているだけの消費者なんか、企業にかかっては簡単に騙されてしまう。消費は快楽を求める行動だと誰かが言ったが、『この商品は@@@だからエコです』なんて説明を聞くと、消費の意欲が正当化されたようで消費者は安心して買うことができるのかもしれない」



白クマ  「2009年に明らかになったが、日立は冷蔵庫で、廃家電からリサイクルした樹脂を断熱材に使い、製造工程で最大約48%のCO2を削減したと表示していたが、実際には一部にしか使用しておらず、旧型機種の製造工程と比べると最大約15%の削減でしかなかった。そこで公取委景品表示法違反で排除命令を出した」



ブルーギル「十分な断熱効果が得られないためリサイクル素材の使用を減らしたが、その情報が宣伝部門に伝わらなかったと企業は釈明したが、財団法人・省エネルギーセンターの省エネ大賞はしっかり受け取り、約15万台、300億円を売っていたというから、単なる連絡ミスじゃないな。おそらく、今回は特別なことという意識が社内になかった……つまり、同様のことは、よくあることだった」



白クマ  「製造工程でのCO2削減なんて、部外者には確かめようがない。工場を見学でき、リサイクル素材を使って旧型機種の製造工程に比べて@@%削減できたと説明されても、『そうですか』と言うしかない。騙そうとすれば、いくらでも騙すことができる」



ブルーギル「流行のCO2絡みのエコ自体が巨大な詐欺みたいなものかもしれないが、それはさておき、問題となった冷蔵庫は大型だが、田舎ならともかく都会では、買い物の回数を増やし、小型冷蔵庫を使って、食糧を溜め込まないほうがエコだとする人もいる」



白クマ  「エコは一見、科学的な装いだが、実は各人の主観が相当混ざり込むことのできるものなんだな。科学的というより政治的な問題だとする人もいる。冷静な検証や議論を放棄し、危機意識が先に立ち、『何かをしなくっちゃ』『私にできることから始めなくっちゃ』なんて、行動を促された人々が、いいカモになる」



ブルーギルエコ偽装だからと冷蔵庫の回収を要求する消費者は、いるんだろうか。企業の態度から見ると、回収などしそうにない。『冷蔵庫を回収して廃棄すると、環境には優しくないことになりますから』なんて言いそうだな。エコ商品を買うのはいいことだと信じて、しかも消費意欲を満足させることができたのだから、問題の冷蔵庫を買った人々は大して文句を言わないかもしれない」



白クマ  「ハイブリッド車がたいそう売れているそうだから、消費の口実としてエコが有効なんだな。製品内部の素材や製造工程なんて消費者には確認しようがないから、そのうちに、『CO2@@%削減』なんて大々的にうたう商品ばかりになる。そうなると結局、商品選択はデザインが決め手なんてことになりそう」