望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

「科学」的な将来予想

 人為的なCO2の排出増加が温暖化を招いていると言われ、早急な対策が求められ始めてから、もう何年になるだろうか。IPCCが創設されたのは88年、世界の科学者の知見を集約したという評価報告書は90年に第1次が出され、95年に第2次、01年に第3次、07年に第4次が発表された。京都議定書がCOP3で議決されたのは97年。



 人為的なCO2排出が温暖化を招くと主張する温暖化論者は、科学的に予想される危機に早く対応を講じなければ取り返しがつかなくなると、CO2の排出抑制を主張する。科学的という言葉に一般の人々は、敬して遠ざかろうとする。うっかり疑問を言おうものなら、細かい数字や難解な理論を持ち出され、「さあ反論してみろ」……専門的な領域に引っ張り込まれたなら対応できず、黙るしかない。



 将来予測は「科学」なのか……という素朴な疑問は、「このままでは地球環境が取り返しのつかないことになる」という危機感を伴う発言の前では無力なように見える。100年後に地球の平均気温が○度上昇すると言われたって、現時点では検証不可能だ。それに、100年間には地球上で様々な自然現象が生じ、人間社会も様々な変化を遂げるだろうから、平均気温が上昇しても上昇しなくても、「科学的」説明はつくだろうしね。



 空に国境があるわけではなし、大気は地球表面を循環するものであるから、例えばEUや日本が排出量を削減したとしても、中国などで排出量が増えれば、地球総体の排出量は増える。



 世界全体のCO2排出量は07年で288億トン。最大の排出国は中国で60億トン。これは世界の排出量の20.7%を占め、2位の米国の20.1%を上回った。3位はロシアで5.3%、4位はインドで4.7%、5位の日本は12億トンで4.2%を占めた。

 当時、日本では鳩山首相が、主要排出国が削減するという条件付きで25%削減を打ち出した。世界の4.2%を排出する日本で25%削減するということは、世界のCO2排出量の1%少々を削減するという計算になる。日本で巨額の費用を費やして世界の1%少々を減らしてみたって、隣の中国では猛烈に自動車が売れ、CO2排出量が増え、日本が25%削減することの効果はかき消される。



 温暖化が危機だというのが本当で、人為的なCO2排出増加がその原因だというなら、いつまでもノンキに排出削減の議論をやっている場合ではない。世界がすぐにでもCO2削減に動くことが必要だろう……でも、中国など発展途上国アメリカはなかなか動かない。ということは、「科学」的な将来予想が的中するのか、実験をしているということだな。