望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

会っただけ?

 え~、サミットとは先進国の首脳会議のことだそうで。集まりましたな。誰かが「ヨッ、大統領!」と声をかけると、「俺のことか」と3人ぐらい振り返りそうですな。誰かが「不人気首相!」とやじると、3、4人ぐらいが、穏やかならぬ表情で横目で見たりして。



 以前だったら先進国って言葉にも重みがあったんですがね、すっかり「輝き」が先進国って言葉から消えてしまいましたな。ムリもありませんや、2008年秋に金融危機が広まって以来、アメリカも欧州も日本も先進国はガタガタ、先進国内で中産階級解体・格差拡大が進んでいますから、「先進国だ、立派なんだぞ」なんて人々は感じることができなくなっているようで。



 75年に日本がサミットメンバーに「選ばれた」時には、誇らしかったんでしょうな。大金を拠出しているのに国連常任理事国になれなかったのが、「一等国」扱いになったんですから。しかし、途上国が発展し、中国が大幅な経済成長を遂げ、先進国だぞと黄門様の印籠のようにかざしてみたって、「へへ~」と恐れ入ってくれる国はもうなくなりましたな。





 おまけにG20とかで、しょっちゅう首脳が集まるようになっては、サミットから特別感は消えました。こうなりゃ、キリマンジャロの頂上とか、南極とか、サハラ砂漠の奥とか、簡単には行くことができないところを会合場所に設定して、その場所に首脳が全員到着すること自体が「成果」だとすると、いくらか特別感が出て来るかもしれませんな。でも、会うことが「成果」というのは現状と同じか。



 聞いた話ですがね、日本はサミットにどういう戦略で臨んでいたかを調べるために中国から研究員が来たんだそうです。日本の研究者とともに、いろいろ調べたそうですがね、日本政府にその種の資料は見つからなかったそうです。資料が見つからなかったということは、1)資料を隠している、2)破棄した、3)作成していない、のどれかですな。



 実態はどうなのか知りませんがね、「対応するだけ」という日本外交のクセを考えますとね、戦略があったにしても「お飾り」に過ぎなかったようで。75年以来のサミットで日本がリーダーシップを世界に見せることができていれば、国連常任理事国の座ももっと現実的な問題になっていたかもしれませんな。