望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

平面はデジタルになじむ

 こんなコラムを2009年に書いていました。


 え~、国営マンガ喫茶と呼ばれた例の建物の建設は中止されたそうですな。日本の「誇る」マンガやアニメを一堂に集めた建物を建てるというアイデアは、いかにも官僚の思いつきそうなものでしたね。そのうちに、マンガやアニメの団体に官僚が次々と天下ってくる布石かと思いましたな。



 マンガやアニメを、優れた表現物として保存しようっていう発想は間違ってなかったンでしょうがね。建物を造る計画はあったものの、内容をどうするかは全くの白紙だったといいますから、今回の計画が「ボツ」になったのは当然でしょうな。マンガやアニメを持ち上げているようで、実は官僚はマンガやアニメを見下していて、利用対象としか見ていなかったンでしょうね。



 世界的に人気や評価が高まっているマンガやアニメを体系的に保存することは、日本がやるべきでしょうな。だからといって、専用の美術館のような建物を建てる必要はない。なぜか。マンガもアニメも二次元における表現なので、デジタルデータ化して保存することができるンですな。



 同じ二次元の表現といっても浮世絵は、刷った1枚1枚が芸術作品として評価されますがね、マンガやアニメは複製芸術です。コレクターは初出の雑誌などを珍重するンでしょうが、マンガの雑誌や単行本を集めて保存することを考えると、膨大なスペースと費用がかかるでしょう。デジタル技術が急速に発達しているので、それを利用しないテはありますまい。



 膨大な書籍のデジタルデータ化にすでに取り組んでいるのがグーグル。箱モノを造って、そこにマンガやアニメを保存するという発想にとらわれていると、先にグーグルが、マンガのデジタルデータ化に手を付けるかもしれませんな。



 マンガやアニメをデジタルデータ化するメリットの一つに、ネットを経由して世界に公開できることがありましてね。著作権の問題があるので、すべての作品を公開することはできないでしょうが、世界のファンがネットで日本のマンガやアニメに接し、日本語への関心を高めたり、日本文化への理解を深めたりすることにつながるかもしれませんな。



 もちろん、ネット経由で日本各地からアクセスできますから、マンガやアニメの体系的なアーカイブは日本国内のファンにとっても福音でしょうな。問題は、デジタル化の手間と費用。文化への理解がもともと低いことに加え、膨大な借金を抱えている財政事情から、「マンガやアニメごときに使う金はない」と言われて終わり……かもしれませんが。