望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

解決策は戦争?


 ある国が債券を発行して財政を回していたが、徐々に歯止めが利かなくなって発行額が膨れ上がっていたが、そこに償還する目処がないことが明らかになって、その国の債券を買っていた他国を巻き込んで大混乱……というのが2011年の欧州金融危機



 「国が発行する債券だから安心だ」と買った連中は、「見立てが甘かった」のだから自己責任で損失をかぶればいいだけの話なのだが、金融機関の破綻は金融システムの破綻にもつながるのでEUの諸国が集まって話し合い、なんとか危機を先送りして時間を稼いだ。



 同年、世界各国に膨大な自国の債券を買わせているアメリカは、議会内の対立で危機を演出した。膨大に債券を発行しているのだから、少々減らしてみたって五十歩百歩だが、この騒ぎで、垂れ流しの米国債に対する不信を意識させた。



 ここからは未来の世界。20XX年、米国や欧州各国は膨大な債券の償還ができなくなり、各国ともシビアな緊縮財政を実施することにした。一種の国際協調の趣で、緊縮財政を緩めていないか互いに監視する仕組みとした。日本も国内で債券が消化できなくなり、海外にも買手は少なかったので、緊縮財政に転じ、欧米の相互監視の仕組みに参加した。



 そんなシビアな緊縮財政を各国は続けていたのだが、人々の我慢がいつまでも続くものではない。特に若い世代が、「自分たちが贅沢をして楽しんだわけでもないのに」と不満を高め、それがナショナリズムなどに結びついて、中には過激化する連中も各国に現れた。



 各国に若い世代を主体とする行動的な「愛国派」が増え、当初は移民などに矛先が向かっていたのだが、やがて各国の「愛国派」は互いにののしり出した。ののしり始めると、互いに材料には事欠かない。南欧各国はもちろん、ドイツやフランス、英国、アメリカ、日本など各国にも、ののしりの材料はタップリあるので、自国以外は、ののしりの対象となり、国際的な緊張が徐々に高まった。



 膨大に積み上がった債務は緊縮財政だけで償還できない。何か新しい「需要」が必要だと各国は探していたが、BRICsなどの新興市場は自立して発展するようになり、先進各国は「お裾分け」をもらう程度だった。



 そんな中、欧州で各国の「愛国派」が衝突、それが国家間の対立につながり、局所的な武力衝突が始まり、やがて拡大して行った。欧州から地理的に離れているアメリカも日本も、それぞれに「同盟国」を支援し始めた……こうして緊縮財政からの出口を探していた各国は、新しい「需要」の創造に成功した。