望潮亭通信

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フォークランド諸島の帰属

 大陸から離れた海洋の真只中にある島々で、2国が領有権を争っており、おまけに付近に海底油田があると推定されている……この島々はどこか? 日本では尖閣諸島を想起するだろうが、フォークランド諸島(アルゼンチン名はマルビナス諸島)のことでもある。

 フォークランド諸島は南米大陸の南端沖の南大西洋にある。地理的に最も近いのはアルゼンチンだが、イギリスが1833年から実効支配を続けている。島々から遠く離れ、北半球に位置するイギリスが領有しているのは植民地主義の名残である。

 当時は列強が植民地獲得競争を繰り広げていた時代であり、フォークランド諸島も16世紀にスペインに「発見」されて以来、フランス、アメリカも交えて領有を争ってきたが、占領に成功したイギリスが実効支配を続けて来た。イギリスは中国に植民地の香港を返還してやっても、中国ほどの経済力がないアルゼンチンには植民地を返還する気はないようだ。



 アルゼンチンではマルビナス奪還は国粋主義者の悲願だという。その種の悲願は、民衆に不人気の政権(当時のアルゼンチンでは軍事政権)が、人気回復のために利用する道具となりやすい。



 アルゼンチンは1982年4月に陸軍を上陸させ、島を制圧したが、はるばると金波銀波の波乗り越えて攻めてきたイギリス軍の機動艦隊とアルゼンチン軍の戦闘が始まり、激戦が続いたが、6月には島にいたアルゼンチン軍守備隊が降伏して戦闘が終わった。



 実力では島を奪還できなかったアルゼンチンだが、その後も領有権を主張し続けている。イギリスも譲る気はなく、戦争後は島のインフラ整備を進め、北部海域で石油が発見されたことにより、経済発展の期待が高まった。ただ、石油の発見が、アルゼンチンの領有権主張を強めるのではないかとも懸念されているとか。



 さて、フォークランド諸島の領有権争いに第3者の日本が仲裁に入るとしたら、どんな案を出すだろうか。どちらかの領有権を認めると、もう一方が納得しないだろう。では、1)共同統治する、2)半分に分けて両国で分割統治する、3)国連が管理する……どの案も両国とも受け入れないだろう。土地の領有権をめぐる争いには、当事者以外は、距離を置いて首を突っ込まないほうがよさそうだ。



 尖閣諸島北方領土のことでアメリカや国際社会の仲介に期待する声もあるというが、領有権争いには第3国は距離を置くのが外交常識だという。さらに、フォークランド諸島や北方領土のように、一方が軍事的に占領したからといって、他方の領有権主張を止めることはできない。つまり尖閣諸島北方領土竹島も、実効支配国が今後変化しようと、領有権争いは今後も続いていく。



 領有権を争う問題では国際社会は頼りにならないが、機会を捉えて日本の主張をアピールし、周知させておくことが不可欠だ。冷静に理性的に、時には強い態度で日本の主張を国際的に発信する……でも、日本人のみの閉鎖的な記者クラブ相手の会見に馴れきった政治家には無理か。