望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

事実の確認

 インターネット上には情報が溢れているが、それは①事実を正確に伝えている情報、②事実を誤って伝えている情報、③事実を歪めて伝えている情報、④事実と無関係に創作された情報、に大別される。その見極めは簡単ではなく、また、人は自分が好む情報を探す傾向があり、正確さが常に意識されているわけでもない。

 さらに、事実を正確に伝えている情報が常に正しいとは限らない。典型的なのは、誰かの発言を伝える情報だ。その発言の存在が事実で、発言内容を正確に伝えている情報であっても、その発言の意味する内容が正しいかどうかは別問題だ。

 例えば、政治家など著名人が「UFOを見た」と言ったと伝える情報。その発言が実際に存在し、発言内容を確認したならメディアは「UFOを見たと◯◯さんが言った」と報じることができる(UFOなら、その情報を見た人は発言を面白がるだけで、UFOの存在を信じる人は少ないだろう。だが、現実的な事項についての発言なら、発言内容を事実と受け止める人がいるだろう)。

 「UFOを見た」との発言の存在と発言内容を確認して歪めずに伝えたなら、メディアは事実を伝えたことになる。しかし、「UFOを見た」とメディアが報じることで、UFOの存在が確かめられたかのように受け取る人もいるだろう。意図的なミスリードでなかったとしても、結果としてはミスリードとなる。

 この種のミスリードを防ぐためには、メディアは誰かの発言を報じる時には、その発言内容を検証し、事実であることを確認する必要がある。だが、発言は当人の見解や主張を述べる場合が多く、客観的な事実認識に基づいていることもあるし、主観的な事実認識に基づいていることもある。偏った見解や主張であっても著名人の発言であればメディアが報じるのは、発言の存在という事実のみに基づく。

 メディアは、発言の内容を検証して客観的事実に基づかない見解や主張は報じるべきではないだろう。誰かが「UFOを見た」のが事実かどうか客観的に検証することは不可能なので、UFOの存在は確認されていないというのが客観的な判断だろうが、UFOが社会的に大きな関心事であるなら、UFOに関する著名人の発言がニュースバリューを持つ。

 「UFOを見た」との発言が事実であっても、本当に何かを見たのか、見たのは本当にUFOかなど確認すべきことはある。ただし、UFOの存在を肯定し、存在するとの認識を広めたいと考えるメディアなら、「UFOを見た」という著名人の発言を積極的に利用するだろう。