望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





ゴジラ出よ

 怪獣「ゴジラ」がスクリーンに初めて現れたのは1954年(昭和29年)だから66年前だ。当時は身長50メートルとの設定だったが、その後、高層ビルが多くなったため、身長は100メートルという設定になった。50メートルというと、だいたい14、15階から20階ぐらいの高さ(1階当たりの高さはビルによって異なる)だから、身長50メートルだったら高層ビルの陰に隠れてしまう。



 ゴジラや怪獣たちは、東京タワーをはじめとして札幌テレビ塔幕張メッセ、国会議事堂、東京都庁天王洲アイル東京ビッグサイト横浜ランドマークタワー、横浜ベイブリッジ名古屋城京都タワー大坂城、瀬戸大橋、福岡タワーなど各地のランドマークや新設の大規模な建物、有名スポットなどを破壊しまくることでも知られている。



 もちろん、有名建築を破壊することがゴジラや怪獣たちの目的ではなく、たまたま彼らの進路に建っていたものが壊されたり、ゴジラと怪獣が闘う場所になってしまうことで破壊される。都会以外でも全国各地でゴジラと怪獣たちは闘うので、彼らに都会の有名建築物に対する破壊衝動があるわけではなさそう(脚本家にはありそうだが)。



 こうなると、次にゴジラや怪獣が破壊するのは何かが気になる。10年前の2004年に公開された第28作以来、国内でのゴジラ映画の製作はストップしたままだが、その間に新しい建物が東京には続々と完成している。ゴジラや怪獣が破壊“すべき”有名スポットはけっこう増えた。



 次に破壊される対象として最も“人気”があるのは、新しい東京名所になっている東京スカイツリーだろう。問題は、スカイツリーの高さが634メートルもあることだ。身長100メートルのゴジラが横に並んでも、第1展望台は高さ350メートルにあり、第2展望台は高さ450メートルにあるので、展望台から遥か下にゴジラが見下ろされることになる。



 スカイツリーはアンテナ部を除いた塔本体の屋上で高さ497メートルというから、ゴジラ5頭分に相当する。大地震に備えて頑丈な作りになっているといい、基礎は深さ50メートルまで打ち込まれており、地上部分の本体だけで約4万1000トンの重量があるから、ゴジラといえどもスカイツリーを破壊するのは簡単ではなさそう。



 それなら、ゴジラが東京に上陸する時にゲートブリッジを壊し、下町方面に向かわずに渋谷辺りで怪獣と闘ってヒカリエを破壊し、東京湾に戻る途中で新設の新国立競技場を破壊して、お台場辺りを荒らしながら海に消えるという展開もありそうだ。でも、せっかく久々に東京に現れたゴジラなのに、スカイツリーをスルーしたとあっては「面目」がつぶれるかな。