望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

東京ボ○キ

 こんなコラムを2010年に書いていました。

  建設中の東京スカイツリー(高さ634m=完成時)の観察者は同時に、東京の活力復活を寿ぐアジテーターでなければならない。日々高くなっていくスカイツリーを、天に向けて東京がボ○キしていると思想するべきなのだ。そのように見ることができない人間は、その人の思想そのものがボ○キしていないのだ。

 

 思想がボ○キする? そう、するのである。欧米から輸入した思想でいくら飾り立てても、知識人・インテリを気取るのがせいぜいのところだ。テキストになるものの理解や解釈を競うことに手一杯で、独創性が二の次三の次では、思想がボ○キするはずもない。

 
 石原
都知事は、障子を破るものとしてボ○キを描いたが、東京ボ○キは障子など破らない。天に向けて雄々しく立ち上がり、電波を射精、いや放射するのである。放射するのが地デジ電波であるのが、ちと情けなく、20世紀に大震災や戦争で壊滅させられても復活した東京の活力・生命力こそ、東京ボ○キが放射すべきものである。

 

 スカイツリーは新たな観光名所などではない。地デジ? そんなものは光ケーブル網を整備し、全家庭を結ぶようにしたほうが、双方向通信機能を行政事務などに活用することもできたので、はるかに上策であったろう。それなのにスカイツリーを屹立させたのは、都民を、さらには日本人を奮い立たせるためである。ボ○キしてみせたなら、後には引けまい。

 

 人と人をつなぐのが思想であると平岡正明が書いていたが、人と人をつなぐのは人であるとも書いている。正確に言おう。ボ○キしている思想だけに、人と人をつなぐ力はあり、人がボ○キすれば人とつながる。東京がボ○キするということは、ニューヨークに、パリに、北京に、上海に、ボンベイに……世界中の活力ある都市に、オイラの活力はどうだと挑んでいるのだ。

 

 日本はデフレが続いている? 日本の製造業に対する評価も揺らぐ? 戦略が明確な韓国企業に日本企業は押されっぱなし? 勢いのある中国に日本経済は抜かれる? それがどうした? 栄枯盛衰は世のならい。落ちたなら、また、這い上がればいい。



  東京ボ○キ、する? するぜと答えたものが新しい東京を、新しい日本をつくっていくのだ。小奇麗な箱ものなど必要ない。必要なのは、動かす力だ。流れをつくり、渦をつくり、何でも巻き込んでしまえ。意気揚々と混沌に飛び込み、混乱を楽しむ……肚を据えたところが、いつでもスタート地点になる。