望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

NHK解体論

 映画などの動画ネット配信で定額制ならユーザーは契約期間は見放題となり、好みの作品だけを見てもいいし、手当たり次第に次々と見てもいい。映画などの動画配信に関心がない人なら契約しなければよい。契約を強制されることはないし、動画配信を行っている企業から、見てもいない配信の料金を請求されることもない。

 一方、放送を見ていない人にも定額の受信料を請求するのがNHKだ。受信料の徴収率を更に上げようと、テレビ設置の届け出の義務化やテレビ未設置の届け出の義務化、未契約者の氏名照会の制度を求めたが、総務省は見送る方針だと報じられた。ただ総務省は、テレビを設置していない世帯を含め日本の全世帯に受信料を義務化することを検討しているともされるので、NHKの要望が却下されたわけではなさそうだ。

 1200億円の剰余金があるNHKは受信料の徴収率が8割を超え、現金が毎月入って来るので運転資金に窮しているわけではない。受信料の徴収に一生懸命になるのは、放送法でテレビ設置者に受信契約を義務付けているからだが、NHKには別の狙いがありそうだ。その狙いは、番組のネット配信が拡大するであろうことと関係していそうだし、公共放送であるとの位置付けを受信料を徴収することで人々に意識づけるためか。

 CMが入る民間放送に対し、人々から広く徴収する受信料で成り立つ公共放送は国家や政党、団体、企業などの影響を排し、中立公平であることが基本だ。だが、①NHKは政府寄りだとも見られ、本当に中立公平なのか、②政治に予算を握られているNHKに中立公平を求めても無駄、③民間放送と同様の娯楽番組が増えたNHKだが、公共放送にふさわしい番組とは何かーなどの疑問がある。

 NHKは肥大化でも批判される。ラジオや衛星放送のチャンネル数をそれぞれ1つ削減すると打ち出したが、それでも放送チャンネルはまだ多く、子会社や関連会社、関連法人も数多い。受信料という現金が安定的に入ってくるのだからコスト意識が希薄だろうことは想像でき、公共放送の名の下にNHKグループの体制固めと拡大を進めてきたと見える。

 公共放送に求められるのは何か、それを考えることがNHK改革の第1歩だ。NHKの番組に慣らされていると批判精神は鈍り現状の番組編成を受け入れるだけになるが、例えば、大河ドラマ紅白歌合戦が公共放送にふさわしいのか。コスト面で民間放送には制作できないとされるが、大河ドラマ紅白歌合戦がなくても公共放送は成立する。

 肥大化したNHKは、公共放送としてのNHKと、大河ドラマ紅白歌合戦なども含め娯楽番組を主体とするNHKに解体するのがいい。公共放送としてのNHKは地上波、ラジオ、衛星放送の3チャンネルで定時のニュースを主に24時間放送する。娯楽番組主体のNHKは民間企業化して独立させる。公共放送としてのNHKを支えるだけなら受信料は大幅に安くできるだろう。