望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

放送とネットの対立

 楽天が2005年にTBSに経営統合を迫ったが、そこでも「放送とネットの融合」が大義名分の一つに挙げられていた。ライブドアとフジテレビの騒動の時にも持ち出された一見解りやすそうな「放送とネットの融合」、しかし、その中身は具体的には漠然としたままだった。

 その内容として、①過去に放送したドラマなどを蓄積しておき,視聴者はいつでも呼び出して見ることができる,②ドラマなどで出演者が身につけている衣服,小物などを即時的にネット通販で購入できる,③クイズ番組や討論番組などで視聴者参加がしやすくなるーーなどがいわれていた。

 一方では、①著作権料を払ってもペイするほど視聴者は過去のドラマなどを見たがっているのか、②例えば,膨大なTBSの放送済み番組を楽天のサイトから見に行くことができるようになったとして、それほどの広範な需要があるのか、③ドラマの途中で視聴者の関心が,出演者の衣服や小物に行って買い物ページに飛ぶような番組に魅力があるのか。番組連動の通販が可能だと言う前に、番組としての魅力が乏しければ視聴者が集まらないーーなどの反論が出ていた。 

 そもそも、ながら視聴も含め受身で見ているテレビ視聴者と,意識的に見に行くネット利用者を同列にとらえられるのかという点をよく考える必要がある。ネット利用者が見たいと思う番組に絞ってネットで提供するならビジネスとして成り立つかもしれないが、それがどういう番組なのかは誰も知らない。

 百万円もあれば必要な機材は揃うので、ネット上に「放送局」を作るのは簡単だという。楽天の資力があれば毎日、ネット上に独自制作のコンテンツを流通させ,自前の「放送局」を作ることができただろう。ニュースは難しいかもしれないが、ドラマやトークショー,ライブなどの歌番組,旅番組,料理番組、新商品などを紹介する情報番組などを制作プロダクションと組んで流し,蓄積して行くことはできただろう。しかし,楽天ライブドアも自前の番組コンテンツを作ろうとは動かなかった。

 なぜ、ネット企業は放送局を欲しがったのか。放送局の持つ社会的信用・信頼感を手に入れて、株価頼みの「虚業」から「実業」へと軸足を移したがっていたのかな。