望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ビールの注ぎ方

 ビールをおいしく味わうには、泡がポイントだという。ビール会社のサイトによると、ビールの泡はビールの酸化を防ぎ、炭酸ガスが抜けることも防ぐとともに、苦み成分が多く含まれるので味わいを濃厚にするという。ビールがぬるいと泡は多くなり、冷やし過ぎでは泡が少なくなるなど、泡でビールの状態が判断できるそうだ。



 きめ細かな泡がグラスの3割ほど占める状態が、最もおいしいという。そうした泡をつくるには、ビールを3回に分けて注ぐ。それは、1)グラスを垂直に立て、少し高い位置からビールを勢いよく注ぐ(きめの粗い泡をグラスの8割ほどまで立てる)、2)30秒ほど待って泡が落ち着いてから、静かにビールを注ぎ足す(泡がグラスの縁あたりに来るまで)、3)また泡が落ち着くのを待ってから、きめ細かな泡を持ち上げるように慎重にビールを注ぐ(泡がグラスの縁の上に盛り上がるまで)。



 なんだか面倒くさそうだが、ビールのおいしい注ぎ方を実演した動画を見ると、そう難しそうには見えない。ただ、泡が落ち着くのを2回も待つので時間はかかる。さっとグラスにビールを注いで、すぐに飲みたいという気分の時には、まだるっこく感じそうだし、飲み会などで、そんな注ぎ方を続ける奴がいたなら、すこしシラケた雰囲気になりそう。



 飲み会などでは、誰かのグラスのビールが半分ほどになっていたなら、容赦なく他の誰かがビールを注ぎ足すことが多い。ビールの注ぎ足しは、炭酸ガスが逃げ、味を損ねるそうだが、飲み会などでビールの味を賞味するのは最初の1杯だけだから、場が盛り上がっていれば、ビールの味が損なわれようと関係ないか。



 でも飲み会でのビールの注ぎ方にも「作法」があって、これはこれで面倒そう。曰く、ラベルが上に来るように瓶を持ち、片方の手で瓶の底を支えながら、始めは勢いよく、徐々にゆっくり注ぐのだという。そんなことを誰が決めたんだ?と疑問になるが、接客業のスタイルが広がっているのかもしれない。この注ぎ方は、味には関係なさそう。



 実は、もっと簡単な、おいしいビールの注ぎ方がある。それは、1)グラスを垂直に立て、勢いよくビールを少量注ぐ(グラスの5分の1~3分の1)、2)それを飲み干す。ポイントは、1回で飲みきれる分だけをグラスに注ぐこと。きめ細かい泡が好きなら、きめが粗い泡が落ち着くのを待って飲み干す。

 グラスにはビールを残しておかず空にしておき、飲みたい量だけを少しずつ、そのつどグラスに注ぐ……こんな簡単なことで、もっとビールをおいしく楽しむことができるのだが、世間にはほとんど広まっていないようだ。やはり、飲み会などで実践しようとしても、空いたグラスには誰かに容赦なく注がれてしまうからかな。