こんなコラムを2006年に書いていました。
安倍内閣が最重要法案としていた「国会議員(代議士)教育基本法」が会期末直前に成立した。これは、世襲議員が増え、首相も世襲議員の就任が続くなどの状況を受けて、国会議員の子弟には小さな時から、将来の議員生活に備えて英才教育を国家予算で行おうというものである。
同法は制定の趣旨を前文で謳う。
「我々日本国民は、たゆまぬ努力によって増やしてきた民主的で文化的な世襲議員を更に養成させるとともに、日本周辺のみの平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、議員階層の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた世襲議員の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す議会を推進する。ここに我々は、日本国憲法の精神をうっちゃり、我が国の未来を切り拓く世襲議員の増殖体制を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する」
第1章では世襲議員の子弟の英才教育の目的を「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家および社会の指導者として必要な資質を備えた、心身ともに健康な世襲議員の育成を期して行われなければならない」とし、(1)幅広い知識と教養を身につけ、豊かな情操と道徳心を培うとともに健やかな身体を養う、(2)尊重される指導者として、その能力を伸ばし、創造性を培う、(3)公共の精神に基づき、指導者として社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う、(4)伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する態度を装う技術を養う、としている。
第2章では「実施に関する基本」として、(1)国民は世襲議員子弟に英才教育を受けさせる義務を負う、(2)世襲議員子弟は、各個人の有する能力を伸ばしつつ、国家及び社会の指導者として必要とされる基本的な資質を養う、(3)国及び地方公共団体は、英才教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力・監視の下、その実施に責任を負う、(4)世襲議員子弟の英才教育については授業料を徴収しない。
第3章では教育行政について、(1)国は英才教育水準の維持向上を図るため、総合的に施策を策定し、実施しなければならない、(2)地方公共団体は、その地域における世襲議員子弟の教育の振興を図るため、その実情に応じた施策を策定し、実施しなければならない、(3)国及び地方公共団体は、世襲議員子弟の教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない、としている。
また、家庭及び地域住民その他の関係者の責務として「世襲議員子弟が英才教育により、指導者としての役割と責任を自覚するように努める」とし、世襲議員子弟に「良識ある指導者として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」としている。また、将来、議員になった時に自由に党派を動くことができるように英才教育では「特定の政党のための政治教育その他政治的活動をしてはならない」「特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」とも定めている。
なお、世襲議員子弟には一般人の手本となるよう、君が代斉唱の時には、指3本が入るほど口を大きく開けて、大きな声で歌わなければならないと付属文書に記されている。