望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

東京あらーと

 「東京あらーと」と耳にして、東京のアラトで集団感染が発生したのかとつい早合点しそうになった。最後にトがつく地名は東京に青砥があり、全国には早戸、隼人、三郷、湊、明戸、小本、荒砥、有戸、関都、千里、広戸、土本、船戸、鳴門、根本、大和、山都、大戸、湯本、京都、水戸、瀬戸などもある。荒砥は山形県

 「東京アラート」は耳に入りやすいキャッチコピーだ。感染者が増えている状況だと人々に注意を喚起するために東京都が新たに設定した。発案者が誰か定かではないが、外国の大学出で英語にも堪能だろう現在の都知事の好みそうな文言だ。人気頼みの浮き草稼業である政治家は、観客である人々にウケることが大切で、注目を引き付けておくためには様々な演出が必要になる。

 この都知事は英語を使うのが好みのようで、オーバーシュートとかロックダウン、都民ファースト、ワイズ・スペンディング、ホイッスル・ブロワー、ダイバーシティ、サスティナブルなどカタカナ語が多過ぎるとの批判が以前からあった。国際都市の東京だから、都民の大半は英語を使えるので理解できる?

 日本語の適当な訳語がないなら、新しい専門語など英語をカタカナ語にして使うことがある。だが、大半の英語の文言は日本語で表記できる。日本には西洋の言葉を翻訳して漢字で表現してきた歴史があり、膨大な蓄積が豊かな日本語の世界を形成した。翻訳とは言葉の定義を確定する作業でもあった。言葉を主観で恣意的に使うには定義を曖昧にするほうが都合よく、カタカナ語は便利だろう。

 カタカナ語を多用するのは、①英語で思考しているから、つい英語で話す、②英語を話せるんだゾと強調、③思考が欧米追随、④タレントのルー語のファン、⑤カタカナ語を混ぜることが知性的と信じている、⑥聴衆を煙に巻くため、など状況は様々だろう。①の場合は、カタカナ語の発音が英語そのままだったりするから判別できる。

 政治家がカタカナ語を使うのは、聴衆に理解を求めることより、一方的な主張・見解を披露する場合だ。相手の賛同を得るには、相手と言葉の定義を共有して説得しなければならないから、曖昧なカタカナ語で気取ることは逆効果だ。権力に基づく指示や命令なら、カタカナ語を振りまいても、理解できない相手が悪いとできよう。

 カタカナ語の多用は欧米コンプレックスの名残とも見える。そういえば9月入学の主張の理由は「欧米に合わせるため」と欧米コンプレックス丸出しだった。こうした欧米コンプレックスの人がカタカナ語を話すのを聞いて残念なのは、カタカナで発音していること。せめてRとLを区別し、BやV、P、thなども正しく発音して欲しい。それでこそ欧米人に近づけるぞ。