望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

基準は二転三転

 中国湖北省は2月13日から、検査でウイルス感染が確認されていなくてもレントゲンなどの画像診断で肺炎の特徴がみられた場合には「臨床診断」として新型コロナウイルスの感染者に加えたため、新たな感染者の数が大幅に増加した。この感染認定の変更がなぜ行われたのか、どこかからの指示があったのかは不明だ。

 ところが湖北省20日、診断基準を変更したとして、「臨床診断」で感染者とされた人を差し引いて発表したので新たな感染者数は減少した。中国からの発表データに頼るしかない日本など外国メディアの中には、感染の勢いが鈍ったなどと早合点して報じたところもあったそうだ。

 認定の基準は二転三転する。翌21日に湖北省は、感染者の急減に関して「データ調整が疑念を招いた」として、「臨床診断」による感染者の数を差し引いて発表することを禁止、「再度、足し合わせる」とした。省トップは「確定診断病例の除外は許されず、責任者には厳しく責任を問い、感染状況のデータの透明性と正確性を確保していく」と述べたという。
 
 ウイルス検査で陰性であっても画像診断などで肺炎の症状のある患者を、新型コロナウイルスの感染者と認定するか認定しないか。認定した場合には、あらゆる肺炎の患者も新型コロナウイルスの感染者にカウントされ、認定しない場合は、検査で見つからなかった新型コロナウイルスによる肺炎の患者はカウントされない。

 新型コロナウイルスに感染した人から必ずウイルスが検出されるならば、判定が容易で、こうした混乱は起きなかっただろう。新型コロナウイルスに感染しても症状が長期間現れず、ウイルス検査で陰性と判定される人が多く存在するのならば、「臨床診断」の併用には合理性がある。また、患者の急増で医療現場が混乱している状況なら、「臨床診断」の併用は必要かもしれない。

 同一人に対するウイルス検査の結果が食い違う事例が世界で頻発していることを見ると、新型コロナウイルス検査の結果は絶対視できないようだ。症状はなく、検査で陰性を示しながら体内に潜伏するのが新型コロナウイルスだとすると、感染の広がりを抑えこむことは簡単ではないだろう。

 中国での認定基準の二転三転は、当局が数字を操作しているとの疑念を高めた。そうした疑念は以前からあったが、感染状況を世界が注目している中で当局が数字を修正して、減らしたり増やしたりした。厄介なのは、「臨床診断」による感染者数を含む数字が正確なのか、含まない数字が正確なのか、あるいは正確な数字は全く別なのか、外部から判別できないことだ。