望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

致死率の差

 日本政府は検査数を抑制して、新型コロナウイルスの感染者数を少なく見せているとの批判がある。一方、感染者の多くは軽症であり、高齢者や基礎疾患がある人の検査を優先したから日本では、病院が様々な感染者であふれて対応が追いつかなくなる医療崩壊を阻止できているとの指摘がある。

 検査数を増やせば感染者が増えると各国の例から推察できる。検査数を増やして感染者をできるだけ多く見つけ出して隔離することは、致死率が高い疫病の場合は最優先で行うべきだ。だが、新型コロナウイルスは、「8割の患者は軽症のまま治癒」し、「2割の症例で肺炎症状が憎悪し入院」「約2〜3%で致命的」という(厚労省サイト)。

 インフルエンザに比べると新型コロナウイルスの致死率は高いようだが、軽症や無症状の人を早期に徹底的に見つけ出して隔離することが最優先の対策かどうか判断が分かれる。感染の実態を正確に把握するためには徹底的に検査すべきだろうが、重症者の数が限られている状態なら感染者はそう多くないと推定できよう。
 
 各国が公表する累計の検査数(3月13日現在)は、中国が32万件と最も多く、韓国25万件、イタリア8万6000件、ロシア7万7000件、英国3万件、米国1万4000件などとなる。日本は3万2000件。中国は独自に簡易検査用の診断キットを開発し、現場の医療機関などで検査を行っているという。

 新型コロナウイルスの致死率は国によりバラツキが大きい。WHOは致死率を3.4%と発表したが、各国の致死率(3月22日現在。カッコ内は死者数)は、イタリア9.0%(4825)、インドネシア8.4%(38)、イラン7.5%(1556)、フィリピン6.3%(19)、スペイン5.4%(1381)、英国4.6%(233)、中国4.0%(3261)、フランス3.9%(562)、オランダ3.7%(136)、ベルギー2.4%(67)、トルコ2.2%(21)、米国1.2%(307)、韓国1.2%(104)、スウェーデン1.1%(20)、スイス0.9%(56)、ポルトガル0.9%(12)、ドイツ0.3%(46)などとなる。日本は3.4%(36)。

 各国の致死率の違いは、衛生状態や医療体制、人々の健康状態など様々な要因が関係するのだろうが、バラツキ度合が大きすぎる印象だ。新型コロナウイルスの致死率は何かの因子に大きく影響されるのか、適切な医療を施している国では致死率を下げることができるのか、世界は模索の真っ最中だ。

 検査数が少ないとの批判が向けられている日本だが、死者数は、中国や急増する欧米諸国に比べて低位にとどまっている。感染者数と死者数に比例関係があるのなら、死者数が低位の日本は感染者数も低位であると推定できる。ただ、それが成り立つには、新型コロナウイルスの致死率が世界的に同程度であることが必要になる。致死率のバラツキが存在し続けるなら、死者数で感染者数を推定することはできない。