望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

パリ協定の不都合な真実

 パリ協定は各国がそれぞれ削減目標を決め、その達成を相互に監視する仕組み。先進国だけに削減義務を負わせた京都議定書とは異なり、途上国を含めて多くの国を参加させるために、削減目標の達成を義務とはせずに削減に向けた努力を促すことにした。

 各国が独自に削減目標を設定でき、その達成は義務ではないので、現実離れした高い目標を掲げることも、実際に達成が確実な低い目標を掲げることもできよう。世界の温室効果ガス全体の2割以上を排出する中国は、現実的な目標を掲げた。それは①2030年までにCO2排出量を頭打ちさせる、②GDP当たりCO2排出量を05年比で60~65%削減などというもの。

 つまり中国は経済成長が続くことを見込み、2030年頃まではCO2排出量は減少しないでしょうと言い、GDP当たりで削減するけど経済成長すれば総排出量が増えるのは仕方がないと言っている。主要排出国である中国を参加させるためにパリ協定は、実際に温室効果ガス排出を減らすことには背を向けた。

 温室効果ガスの排出に関して中国には別の問題がある。それは、中国が発表するデータの信頼性だ。中央政府の計画に合致するよう操作されたデータが地方から報告されているといい、環境関係でも国内での石炭消費量が統計には大幅に少なく記載されていたことが明らかになった。別の言い方をすると、パリ協定で中国が表明した削減目標は、中国発表のデータでは完全に達成されるであろう。

 世界の平均気温の上昇を1.5度以内に抑えるよう努力するというパリ協定だが、平均気温が上昇すると海面上昇、熱波、干ばつ、高潮、熱帯の感染症の拡大、異常気象の増加、森林火災の増加などをもたらし、人間の生活に多大の影響を与えるとされる。これらは未来予測であり、実現可能性を確率で表すのが科学的態度だろうが、「決まった」未来であるかのように喧伝されている。

 温暖化により南極大陸を覆う膨大な氷が融け始めるので海面上昇がもたらされるとされたが、南極大陸を取り巻く海氷の大きさは約100年前と現在でほとんど変わっていないことが明らかになった。20世紀には増加した時期と減少した時期があり、一方的に減少を続けているのではないという。パリ協定で温暖化効果ガスの排出量を実際に削減できなかったとしても、海面上昇は起きないなら皮肉でもあり安心でもある……か。