望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

京都議定書って効果があるの?


 数十年に一度、百年に一度起きる気象現象は異常気象とされるが、地球の“年齢”は46億年という。百年に一度の異常気象は地球から見れば、よくある「日常」の出来事だろうし、千年単位の異常気象も地球にとっては珍しいことではないだろう。つまり異常気象は「人間にとって」の異常でしかない。


 地球温暖化が指摘されている。平均気温が上昇し、産業革命以後に大気中の二酸化炭素濃度が大幅に高くなったという。このまま推移すると、世界で旱魃が広がり(食料生産に影響)、氷河が溶けて海水面が上昇(陸地が狭くなる)、台風等が大型化する(被害が巨大化)などといわれている。


 人間にとっては大変な環境になるという懸念から、温室効果ガスの排出削減を各国が約束する京都議定書がまず締結されたが、当時の最大の排出国アメリカが離脱、中国等は規制の枠外だった。陸地には国境があるが、大気には国境はない。EUや日本が削減目標を達成したところで、その効果は限定的だ。


 温暖化が差し迫った危機であるのなら、人類挙げて最優先で取り組まなければならないはずだが、実際はバラバラ。産業活動を抑制し、先進国は生活レベルを下げ、途上国は現状の生活レベルで「我慢」するなんてことは現実的に不可能だろう。原油天然ガスの生産・使用に国際的規制をかけ、電気代やガソリン代を5倍に引き上げて消費を抑制し、途上国の人々に「電化生活をあきらめろ」「自家用車を持つな」などと命じることができる権力は世界のどこにもない。


 二酸化炭素などの温室効果ガス排出が世界的に規制され、総量で1990年と同量に排出量が抑制されたとしても、それで地球温暖化は改善されるかというと、怪しい。温室効果ガスでもあるフロンはオゾン層を破壊すると生産・消費が国際的に規制されているが、地表で放出されたフロンが成層圏に到達するまでに10年ほどかかるといわれる。つまり規制が完全に実施されても大気中には大量に温室効果ガスが残っている。


 温室効果とは、地球を暖かく保ち、人間にとって好都合なものだった。温室効果ガスがなければ地表の平均気温は零下17度になるという試算もある。ただ、暖かくなりすぎるのはマズいということ。つまり、地球全体のエアコンの設定温度が上がっているが、設定温度を「もっと下げろ」派と「このままで、いいんじゃない?」派がモメテいるというのが現在の図式。


 京都議定書では二酸化炭素の森林吸収分が認められ、また、排出権取引で排出権を買うことや、発展途上国で行うクリーン開発メカニズム、先進国企業同士で行う共同実施が規定され、これらの温室効果ガス削減投資を行うことで企業の排出分を相殺できた。排出量規制を始めるための現実的な仕組みだともいえるが、抜け道とも見える。


 人類にとって温暖化が危機だというのなら、温室効果ガス排出量を実際に削減しなければ意味がない。それなのに、抜け道が用意され、アメリカはそっぽを向き、中国等は当時「蚊帳の外」だった。危機をあおる声とは裏腹に、温室効果ガスの排出量は世界的に増えた。


 地球温暖化とのストーリーが本当だとして、多少の対策をしても今生きている人類にはもう「手遅れ」かもしれない、異常気象を生き抜く覚悟が必要だなどとつぶやいて、日本の夏の厳しい暑さに立ち向かう(しかないのか?)。