望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ドキュメント「情報操作」

 中国の武漢市や湖北省、国家衛生健康委員会による患者数と死者数などの発表を日付順に追うと次のようになる(2019年12月8日に武漢市は原因不明のウイルス性肺炎に感染した患者を初めて確認したとされるが、関連の報道は12月には乏しい)。

 <2020年1月>5日=上海市は病原菌が歴史上見たことのない新型コロナウイルスであることを突き止めた。
 9日=武漢市に中国政府が派遣した調査団が新型のコロナウイルスを検出(9日までに59人の患者が確認された)。
 11日=武漢市で男性(61)が死亡し、初めての死者。10日時点で41人が発症。15日=2人目の死者。武漢市の患者数が4人増え45人。17日=患者数が62人。
 20日習近平が「重要指示」を発布。武漢市は18~19日に発症が確認された人が25~89歳の男女136人と急増し、計198人の患者のうち死者は1人増えて3人と発表。北京市と深圳市は計3人の発症を確認(武漢以外の中国での発症確認は初めて)。中国全体の発症者は201人。。
 22日=死者数は9人に増え、患者数は440人。23日=死者17人、感染者571人。24日=死者26人、感染者830人。25日=死者41人(武漢市内の病院で働く医師1人も死亡)、患者1287人。
 26日=患者数が1975人となり、うち56人が死亡。重症者324人(感染しづらいとみられてきた子供にも発症が拡大)。27日=死者は24人増えて81人、感染者は769人増えて2744人。
 28日=死者が100人を突破し106人、患者数は4515人。29日=感染者は5974人、死者数は26人増えて132人。30日=死者170人、感染者7711人(チベット自治区で初めて感染者が確認され、中国本土の感染は全ての省・直轄市自治区に広がった)。31日=感染者9692人、死者213人。

 1月20日を過ぎてから発表される死者数と感染者数は急テンポで増えた。これは、①ウイルスが伝染性を強めた、②都市の封鎖などにより人々が閉じ込められ感染が拡大しやすい状況になった、③医療現場の混乱により放置されていたデータが収集された、④正確なデータを発表することが政治的に許された、⑤実態に合わせるように発表数字を調整している、など様々に解釈できる。

 更に、20日以降に発表されたデータが実態を正確に反映しているのかとの疑問を持つ人もいる。発表された感染者数がそう多くない段階で武漢市が急ピッチで病院建設を始めたことも、感染者数は発表より相当多かったとの推察を招いている。感染の広がりの実態は外部から判断しようがないが、情報操作がなされていたと考えると、今回の発表は格好な研究事例となる。