望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

手放さない

 1945年に終戦した戦争における日本軍の慰安婦問題は、日本と韓国の間では2015年の日韓両外相共同記者発表で「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」した。しかし、韓国の新政権は国内では解決していないと言い出し、「民意」に振り回される韓国の外交の特殊性がまた露呈した。

 韓国は歴史問題なるもので日本に常に謝罪(と賠償)を要求し、日本が謝罪しても、時間が経つとまた謝罪要求を繰り返す。謝罪が受け入れられてこそ、新たな関係が構築される。謝罪を受け入れる気がないのに謝罪を要求し続けるのは、和解を拒絶しているのであり、関係の正常化はいつまでも実現しない。日本に謝罪を要求し続け、緊張状態にあることが韓国の内政にとって必要なのかと理解するしかない。

 2015年の共同発表で日本側は①当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感、②韓国政府が設立する財団に日本政府の予算で資金を一括で拠出、③今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認し、今後、国連等国際社会において互いに非難・批判することは控える、とした。

 韓国側は①今回の発表により、日本政府と共に、最終的かつ不可逆的に解決されることを確認、②在韓国日本大使館前の少女像に対し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力、③今後、国連等国際社会において本問題について互いに非難・批判することは控える、とした。

 日本と韓国の間では「最終的かつ不可逆的に解決」つまり「ケリがついた」問題であるはずなのに、韓国側で蒸し返されるという現実。外交交渉で日本と合意しても、後から「国民が受け入れられない」などを理由として一方的に引っくり返す韓国。こんなことを繰り返す国は他国からは信頼されないが、そんな韓国に日本は振り回されてきた。

 謝罪があり、それが受け入れられて、和解がもたらされる。しかし、謝罪させたという達成感や高揚感が忘れられないのか韓国は、日本に謝罪させ続けようとする。和解する気がなく、日本に謝罪させることが目的であるなら慰安婦問題は韓国にとって、日本に謝罪させ続けるための最高の道具だろう。被害者を演じ、国際社会で日本を糾弾することを可能にしている。

 慰安婦問題は、韓国が日本に対して倫理的に上位に立つと自負するために必要な道具なのだろう。だから、韓国は決して手放さない。韓国国内ではもちろん、米国など世界でも慰安婦像の設置を広げるなど、慰安婦問題が存在し続けることは韓国にとって日本に対する最上の攻撃材料であり、もう韓国では、不可逆的にも永続的にも手放し難くなった道具なのだ。