中国ではキャッシュレス化が進んで、日本のはるか先を行っているとの報道が増えた。キャッシュレスといっても、クレジットカードを皆が使うようになったのではなく、スマホを使ったモバイル決済。急速に普及し、5億〜8億人の中国人が利用しているという。
よく記事に取り上げられるのは自転車シェアリングだが、ほかにもタクシー、食事宅配、鉄道など公共交通、ネットショッピングなどで利用が進み、飲食店など店舗での決済にも使われるようになり、ホテルやスーパー、コンビニなどでの利用も始まったという。屋台でもQRコードが貼られていて、モバイル決済ができるとか。
急速にモバイル決済の普及が進んだのは、偽札が横行していることに加え、それまでの中国での各種サービスが、あまりに面倒で不便だったからモバイル決済の利便性が際立って利用者が急増したと指摘されている。
キャッシュレス化とは交換価値を電子化することであり、紙幣の存在を希薄化させる。中国のキャッシュレス化については、中国人は毛沢東を本能的に忌避するから紙幣に愛着がないとの皮肉な見方もある。中国の紙幣は8種類(100元、50元、20元、10元、5元、1元、5角、1角)あるが、5角札と1角札以外には毛沢東の肖像画が描かれている。
毛沢東は、歴史に残る中国革命を成し遂げた偉大な指導者の一人だが、その革命の過程では多くの中国人が死傷した。さらに毛沢東が革命後の中国で強大な権力を持つ指導者になった後の統治で、さらに多くの中国人が死傷した。例えば、大躍進や文化大革命。
大躍進では大量の餓死者を出した。チベットだけで1500万人以上になり、全国では3000万〜4000万人が死亡したという(共産党の機関紙では最大250万人としているそうだ。250万人であっても大量の餓死者であるが)。文化大革命での死者数は公式資料には記載がないそうだが、6500万人以上とか7000万人以上、8000万人以上など諸説ある。
大躍進にしても文化大革命にしても、実際の死者数が明らかになるのは中国共産党の1党独裁統治が崩壊した後になってからだろう。おそらく毛沢東は、中国の歴史において最も多数の中国人を死傷させた責任を負う。その肖像画がある紙幣を中国人が本能的に忌避するという見方は興味深い。