望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

少ない女性議員数

 世界の議会(1院制または下院。日本では衆院)における女性議員の比率は24.3%だが、日本は10.2%と世界平均の半分にも及ばず、193カ国中165位だったという(2019年1月現在。列国議会同盟)。これはG7中で最も少なく、G20の中でも最下位となる。

 また、日本の地方議会1788の女性議員の比率は12.9%だから衆院より若干多いものの、地方議会のうち約2割には女性議員が存在しないという(2017年12月現在)。青森県では48.8%とほぼ半数の地方議会に女性議員が存在せず、東京都では9.5%の地方議会に女性議員が存在しない。

 女性議員が国政でも地方議会でも少なすぎると問題視し、女性議員を増やさなければならないとして2018年5月、「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が施行された。これは、国会や地方の議会選挙で男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に努力を求めるもの。ただし、政党に対する強制力はない。

 努力義務というものは現実では無視されるものだ。つまり、国会議員は本気で女性議員を増やそうとはしていない(女性議員の「枠」を増やせば、その分だけ男性議員が減る)。これは、女性議員を増やさなければならないとの意識が実は強いものではないことを示す。

 女性議員が少ないことの問題点として、女性の立場からの意見が議会に反映されないことが挙げられる。だが、個人の女性議員が女性の立場を必ず代表しているとは言えないし、女性議員が女性の地位向上を最優先するとの確証はない。自己の利益を最優先して行動する男性議員が多いように、女性議員も自己の利益を最優先するだろう。

 女性議員にだけ女性の意識を優先して行動することを求めるのは個人の軽視であり、個としての女性を尊重しない差別意識から来る思考だろう。女性を尊重している口ぶりではあっても、数合わせだけのために女性議員を増やすことは、おそらく日本の民主主義に寄与するものは少ない。

 国際比較では日本は女性議員が少ないとされ、日本における女性の社会的地位が低いことの証左であるとの印象を拭うために、女性議員を増やさなければと反応しているように見える。だが、女性が立候補できない制度なら改革すべきだが、意欲ある女性の立候補を日本は制限していない。立候補に消極的な女性を議員にすることに、どのような意義があるのか。

 現在の政治は男性主導で行われており、女性の政界進出に制約があるのは事実だろう。議員としての能力は、おそらく性別差よりも個人差のほうが大きいだろうから、政党が候補者をもっと厳しく選別することで結果として女性議員が増えるなら、現在の政治風土の改革につながるだろう。ただし、問題行動が明るみに出る男性議員が多いのだが、女性議員が同様の問題行動をしないとの保証はない。