望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

雑誌の速読法

 書店が大好きだという友人がいる。帰宅前には必ずといっていいほど、どこかの書店に立ち寄り、昼食後などにも会社近くの書店に出かける。何かの文庫本や書籍を常にバッグに入れているような本好きではないが、友人は書店に寄ることを好む。

 友人は書店で書籍の新刊コーナーは素通りし、雑誌売り場に直行する。書籍に関心がないわけではないが、買ったものの読んでいない書籍が溜まっていることに加え、読みきるために数日以上は要するので、その時間が心理的な負担だと感じるようになり、書籍を買うことを抑制していると友人。

 雑誌は、気になる記事が一つでもあれば以前は買っていたそうだが、読み終えても雑誌を捨てることができない性分の友人なので、雑誌も溜まるばかり。溜まった書籍や雑誌を見るたびに、読書に対する自分の怠惰さを見せつけられているように感じたとか。

 買った雑誌は全部の記事を読んでから処分すると決めた友人だが、買っても気になった記事以外はあまり熱心に読まず、やはり溜まっていくばかり。それで雑誌は基本的に買わず、気になった記事だけを立ち読みで済ますことにしたという。

 月刊誌や専門誌には長い記事もある。書店で熱心に立ち読みしている人が同じページをずっと読んでいる光景は、熱心さは伝わるものの傍目には「買えないのか」と見られることもある。友人は独自の速読法を習得したので、長い記事でもさっさとページをめくるという。

 速読法というと、一字一句にこだわらず、視野を広くして複数の行を見るようにするとか、段落に斜めに視線を走らすとか、視線の移動を速くして無駄な視線移動をしないとか、様々な方法があるらしいが、友人の方法は、各段落の最初の文だけを読むというもの。

 各段落の最初の文だけを読み継いで行くと、記事の趣旨も浮かび上がると友人はいう。速読が目的ではなく何が書かれているかを知ることが目的だから、この速読法は雑誌の立ち読みには適しているそうだ。ただ、論文や小説など一つの段落が長いものには向いていないので、そうしたものをじっくり読みたい時は雑誌を買うそうだ。