望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

メスとオスの比率

 中国大陸の総人口は約14億人とされ、女性人口は約6.8億人で男性人口は約7.1億人なので、男性のほうが3千万人以上多い。男児重視の風習に加え一人っ子政策などの影響もあって男女バランスに偏りが生じた。単純に考えるなら、中国人の結婚相手を見つけることができず結婚できない中国人男性が3千万人となる。

 実際には、結婚相手の年齢・国籍などは幅広く、結婚離婚を複数回繰り返す人もいようから、「あぶれた」3千万人が結婚できないわけではないだろう。さらに、一夫一婦制による婚姻だけが男女関係の全てではないので、男女バランスの偏りは様々なひずみを生じつつも現実社会では潜在化されてしまうのかもしれない。

 世界の総人口は約76億人(2017年)で、女性人口は先進国では51%台、開発途上国では49%台という。生まれる子供は性別では男児のほうが少し多いというから、開発途上国の男女比が自然にも見えるが、いわゆる間引きなどが影響している可能性の指摘もある。先進国で女性人口が多いのは、医療体制の整備もあって女性の平均寿命が男性より長いからとされる。

 種の保存が生命の根本にある原則だとすれば、人為が加わらない自然な状態では、生まれる子供の男女比に極端な偏りは現れないだろう。男女数が同等であればペアの数が多くなり、繁殖に有利だ。男女のどちらか一方が増えすぎるとペアの数が減るから、適切な範囲内に男女比は維持されると考えられる。

 ただし、一夫一婦制などの社会制度を外して考えると違った構図も見えてくる。男女が同数であればペアの数は多くなるが、生殖数がペアの数に比例するとは限らない。例えば、自然界にはオットセイなどのように強い一匹のオスが複数のメスを独占するハーレムが存在する。人間界ではハーレムは不道徳とされたが、種の保存の観点でハーレムが不適当であるかどうかは明らかではない。

 おそらく妊娠や出産だけなら、男女比に偏りがあっても一定数以上の女性が存在するなら種の保存は可能だろう。だが、人間の子供が成長し、次世代を誕生させるまでには年月を要する。つまり人間では、生まれた子供を育てることが重要になる。そのため、過去には女系社会や強い男性に保護されることが有利になる時代もあったのだろうが、個人の権利意識が強固になった近代以降は一夫一婦制が子育てに最適だと認識されるようになった。

 男児の出生数が多いのは育てにくいからだとも言われ、過去には狩猟や近隣との闘争や戦争などで死傷することから社会的に男児が多いことが歓迎されたのかもしれない。中国では一人っ子政策が人口の男女比を歪めた。人類の男女比は自然状態では種の保存に最適になるようになるのだろうが、それはどういう状態か明らかにはなっていない。