望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

決定した未来?

 2012年版「高齢社会白書」によると、日本の総人口は1億2780万人(2011年10月1日現在)で、65歳以上の高齢者人口は過去最高の2975万人(男性は1268万人、女性は1707万人)。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は23.3%となる。うち75歳以上人口は1471万人で、総人口に占める割合は11.5%。

 日本は今後、総人口が減少するなかで高齢化率は上昇し、団塊の世代が65歳以上となる2015年には高齢者人口は3395万人となり、その後も増加を続け、2042年以降は、高齢者人口が減少に転じるが総人口も減少するので高齢化率は上昇する見通しだ。2060年には高齢化率は39.9%になり、2.5人に1人が65歳以上となり、2060年には75歳以上人口が総人口の26.9%となり、4人に1人が75歳以上になるかもしれない。

 こうした将来予想はあくまで直近のデータに基づき、現在進行中の変化が今後も続くと仮定して計算したものだ。だから、戦争が起きて戦死する若者が増え総人口が減少すれば、高齢化率は一気に高まろうし、子供を育てやすい社会になって出生数が増えたり、日本が移民受け入れに積極的になって移民が増えて総人口が増えれば、高齢化率は低下しよう。

 つまり、日本が高齢化率の高い社会になるということは「決定」した未来ではない。日本人が、そうした社会になることを望まず、高齢者を大事にしつつも、若い人や働き盛りの人が多い社会であることを望むなら、変えることは可能だ。

 日本でも世界でも、もっともらしい数字をあげて「20XX年には、こうなる」と示す各種の将来予測が溢れているが、そうした予測に示された将来像に対する反応は二つに分かれる。将来像を受け入れて対応策を考えるケースと、予測されたような将来像が実現しないように対策をとるケースだ。

 前者は経済関係で多く、「ネット通販は20XX年には20兆円市場になる」との予測に企業がネット通販参入を決断したりする。後者は将来像を不都合なものと見る場合で、「このままでは20XX年には国の借金がGDPを上回る」とされると緊縮策を講じたりする。

 高齢化率が高い社会になるという将来予測は、日本衰退論と関係づけて語られることが多いので、「不都合な真実」と見なされているようだ。ならば、どんな対策を講じるのがいいのか議論すべきだが、高齢化を言い立てるばかりに見える(移民の件があるから、腰が引けているのかもしれないが)。超高齢化という将来像を受け入れるのかどうかの社会的判断さえ確立されてないのだから、議論の先は遠そうだ。