望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

函館の柱状節理

 細長い柱状の六角形や五角形などの岩がびっしりと連なって断崖などを成している観光名所は日本各地にある。天然記念物に指定されている東尋坊は「約1300万年前にマグマが地表近くまで上昇し、地中の中で冷えて」固まり、その過程で五角形や六角形の柱状に形成され、「地殻変動により岩が地表に現れ、現れた岩は波や風により柔らかい部分が削られたり浸食されたりして、現在の形になりました」(坂井市HP)。

 マグマや溶岩は冷えて固まるときに縮むが、その時に五角形や六角形などの割れ目が細かく発生して、蜂の巣に似た断面を形成しつつ、細長い柱状の岩石の連なりとなって地表に現れたものが柱状節理だ。日本には柱状節理を見ることができる場所が方々にあり、景勝地となっているところも多い。

 日本には活火山が111あり、世界の活火山(約1500)の約7%を占める火山列島だから、地下のマグマの活動は活発だ(活火山とは、過去1万年以内に噴火した火山や現在も活動する火山)。日本列島の下では太平洋プレートなど海洋プレートが沈み込み続け、海洋プレートから分離した水がマントルを溶かし、発生したマグマが上昇することにより火山の噴火や地震を生じさせている。

 活火山が近隣にないところにも、柱状節理を見ることができる場所が日本各地に存在する。これは1万年よりも過去に火山活動や地殻変動が各地で起きていたことを示す。約7000万年前には日本列島はアジア大陸の一部だったが、約2500万年から分離を始め、約1500万年前に日本海が形成され、数百万年かけて日本列島が形成されたとされるから、活発な火山活動が方々で起きていたのだろう。

 北海道で柱状節理といえば層雲峡が知られている。「約3万年前の大雪山の噴火により堆積した熔結凝灰岩が石狩川の浸食により削られ、長い歳月をかけ現在の姿」となり、「石狩川沿いに約25kmにわたり峡谷」が続き、「中でも、銀河流星の滝から小函、大函までの間は層雲峡の核心部と呼ばれ、高さ200m前後の天城岩や天柱岩、岩の形が独特な羽衣岩、切り立った岩壁の神削壁などの絶景が点在」している(環境省HP)。

 函館にも柱状節理がある。渡島半島の東端に活火山の恵山があり、函館駅から津軽海峡沿いに国道278号線が恵山まで続いている。函館駅方面から向かうと、汐首岬や戸井を過ぎ、サンタロナカセトンネルに入る直前で海岸沿いの旧道へ入ると、岩壁と岩礁の間を道は続き、そそり立つ古い採石場跡が見え、その先に柱状節理の断崖や岩礁海岸が見えてくる。ここが日浦海岸だ。

 日浦海岸の柱状節理は「一見黒っぽく玄武岩のようですが、石英を含むこともある安山岩」で、「旧採石場のあたりでは何回かマグマが貫入したのか、何層もの柱の層が重なり、一部は放射状にも見え」「このように美しい柱状節理が見える場所が少なく」貴重な場所で、海岸には「節理に沿って凝灰岩の角礫が脈のように入り込んで」いるところもある(北海道地質百選HP)。ただし、付近には落石注意の掲示があるので柱状節理に近寄ることは避けたほうがいい。