望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

情報と付加価値

 昨年、一般紙とスポーツ紙を合わせた発行部数が合計2859万486部となり、3000万部を割り込んだ(2023年10月現在。新聞協会調べ)。前年の3084万部6631部から225万6145部も減り、減少幅は過去最大の前年比7.3%減だった。2000年には5370万8831部だったので、44.9%減とほぼ半減した。

 一般紙の発行部数は2022年に2869万4915部ですでに3000万部を割っていたが、昨年は2667万4129部で前年比7.0%減と減少に歯止めがかからない。スポーツ紙は前年比10.9%減の191万6357部と200万部を割った。2000年に630万7162部を発行していたので、ほぼ3分の1にまで減少し、「紙の新聞離れ」がスポーツ紙でも顕著であることを示した。

 2000年には4741万9905世帯で1世帯当たり部数は1.13部だったが、2008年に0.98部と1部を割り、昨年は0.49部で0.5部を割った。昨年の世帯数は5849万3428と2000年に比べ世帯数は1千万以上増えているのだが、それが宅配部数の増加に結びつかず、紙の新聞に対する需要は減り続けている。

 国内における需要が減少し続けている状況に直面した企業は、製造業や小売業などなら海外市場の開拓に取り組むだろうが、英語マーケットに出て行って欧米勢と勝負できる新聞社は日本にはないだろう。それに、世界でも紙の新聞の需要が減少していることを考えると、国内で生き残り策を考えるしかない。

 紙の新聞には、一般紙なら国内外の出来事を伝える記事を中心に解説記事や論評、生活に役立つ記事、寄稿など多種多様な文章がびっしり掲載されている。1面から社会面まで一通り見るだけで時間を要するが、それが情報獲得の窓口であった時代は過去のものになった。自分が欲する情報だけをスマホなどでいつでも得ることができる時代に、紙の新聞による情報提供には付加価値が求められる。

 その付加価値を新聞社は、調査報道や記事の論評・解説を充実させたり、生活情報を増やすことなどに求めるが、そもそも紙の新聞を手に取ってもらえなければ、どんなに充実した紙面を作っても人々に伝わらない。縮小する需要に合わせて新聞社が生き延びていくためには、インターネットの世界で地歩を固めるしかないが、低い収益性に阻まれて斬新な情報提供サイトを構築できないでいるのが現状だ。

 ※新聞協会の発表によると、減少幅が最も大きいのは大阪で9.8%減。次いで近畿(9.6%減)、東京(8.4%減)、九州(8.3%減)と続き、北海道は7.4%減、四国7.3%減、関東6.8%減。中部は6.6%減、中国6.5%減、沖縄4.8%減、北陸4.7%減、東北4.5%減。