望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

「他人」の価値観

 2023年の世界各国の男女平等度をランキングした「ジェンダーギャップ指数」が発表され、日本は146カ国中で125位と評価が低く、先進国で最下位だった。報道によると、政治分野は138位(議員や閣僚級ポストに占める女性の比率が依然として低い)、経済分野は123位(賃金の男女格差などを反映)などと日本は男性優位の社会であり続けていることが示された。

 このランキングで日本の順位を上げるためには女性議員や女性閣僚、女性管理職などを大幅に増やし、男女の賃金格差を大幅に少なくし、女性の高等教育就学率や就業率を大幅に高め、女性の社会参加を積極化するしかない。男性が既得権益を手放さない政界や経済界などでの女性登用は難航するだろうから、ジェンダーギャップに問題意識を持っている(だろう)マスコミ各社が率先して女性登用を進めることを期待するか。

 このランキングは世界経済フォーラムが経済、教育、健康、政治の4分野で各国の評価を数値化して作成した。数値は「0」が完全不平等、「1」が完全平等となり、評価は分野ごとに小数点以下3位までの数値で示される。ただし、数値で示されると客観的な評価であるとうっかり受け止めやすいが、数値を決めるのは人間だ。何に加点し、何に減点するか。それを決めるのも人間だ。

 世界ランキングの種類は多く、人口やGDPなど各国が発表するデータを順に並べたものから、軍事力などのように各国の複数の発表データを組み合わせて順位をつけたものなど様々だ。公表データを基礎にするのはランキングの客観性を装うためと、下位にランクされた国からの批判・不満を予想するからだろう。

 だが、公表データの数値をそのまま使うのではなく、公表データの数値を評価して新たな数値に変えてランキングを作成する方式がある。評価する基準が定められているだろうが、人間がやることだから、判断には評者の価値観が反映するだろう。さらに、評価する基準には、ランキングを作成する組織の世界に対する価値観が込められている。

 ランキングを作成することは世界を評価することだが、発表されたランキングを見て人々は世界を理解する。人々は「他人」の価値観で世界を理解しているのだが、それに気づく人は少なく、自分の考えで世界を理解しているつもりが実は他人の考えをなぞっているに過ぎない。とはいえ世界各国の男女平等度を個人が調べるのは簡単ではないから、世界ランキングの有用さは存在する。

 世界ランキングの対象が、例えば、ヒット曲や映画、食品などだったら、西欧の組織が世界のヒット曲や映画、食品などに順位をつけたとしても、各国の人々は鵜呑みにはせず、異論が噴出するだろう(日本でも異論や批判が噴出するだろう)。ヒット曲や映画、食品などの評価は個人の嗜好や好悪に左右されるので、世界ランキング1位の食品でも世界各国で好まれるとは限らない。