社会主義とは「 生産手段の社会的共有・管理によって平等な社会を実現しようとする思想・運動」とか「社会の富の生産に必要な財産の社会による所有と、労働に基礎を置く公正な社会を実現するという思想」「各人は能力に応じて働き、働きに応じて分配を受ける社会体制を目指す思想」などとされる。
大雑把に言えば社会主義は「社会の少数ではなく多数が利益を得る、より平等な体制」を目指す思想・運動だ。共産主義は「社会主義がさらに発展した平等な社会」と20世紀には理想視されたが、現実のソ連や中国などの共産党による独裁権力が社会に歪みを生じさせ、労働者や農民など社会の多数を占める人々が抑圧される体制であることが明確になり、共産主義の欺瞞性が明らかになった。
21世紀の世界では各国で少数の富裕層が富を拡大させる一方、中産階層の解体が進み、所得格差の拡大が進行し、少数の富裕層と多数の下層・貧困層が形成される過程が進行していると報じられる。20世紀の社会主義は多数を占める労働者や農民らが声を上げ、行動することで社会的な動きとして現れたが、21世紀の世界では労働者や農民はまとまらず、分断されているように見える。
20世紀において共産主義の欺瞞性が明らかになり、社会主義諸国の停滞に比べ先進資本主義諸国の経済発展が目立って社会主義の「輝き」は薄れた。20世紀末からグローバル化という資本主義に世界が覆われる動きの中で、各国で少数の人々に富の集中が進み、格差が拡大し、社会の多数は下層・貧困に向かう構造になった。人々が異議申し立ての声を上げる社会もある一方、自己責任だとの主張に負けて多数の人々が耐える社会もある。
生産手段の社会的共有・管理とは国家による経済支配であり、人々は平等に貧しい状況に置かれたというのが20世紀の現実だ。21世紀の社会主義があるとすれば、生産手段の社会的共有・管理は資本主義社会では不可能なので、社会の多数の人々に対する平等な富の分配を全く別の手法により目指すことになる。
資本主義に対する制約を緩めると社会に格差が拡大することが明らかになった。平等な富の分配を行う社会に向かうには国家の強制力が必要となる。富裕な人々や莫大な利益を溜め込んでいる企業に高い税率を課して税収を増やし、それを人々に分配することでしか、より平等を目指す富の再分配は不可能だろう。
21世紀の社会主義は、①社会で多数を占める人々の利益を優先する、②富の再分配による平等を目指すーが基本になる。そのためには多数の下層・貧困層に支持され、支えられる国家権力が必要となる。多数の下層・貧困層が分断されず、連帯する方向に向かう道標となる思想・アイデアを提供できるならば21世紀にも社会主義は生き続ける。