望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

闇バイトを活用

 高額の報酬を提示して「簡単な仕事です」などとインターネット上で求人する闇バイトの募集は、特殊詐欺の受け子を集める目的が多いとされるが、強盗・窃盗の実行犯や覚醒剤などの運び屋を集めるためにも使われているという。応募時に写真付きの身分証明書のコピーを送り、家族構成などを伝えているため、仕事を断ろうとする応募者は脅されて逃げ出すことが難しいシステムだ。

 そうした闇バイトに応募するのは、お金に困っている人たちや報酬目当てで軽率に動く人たち、順法意識が希薄だったり欠如している人たちだろう。闇バイトで集められた人々の多くは、使い捨てにされるだけだ。変な例えだが、犯罪組織の正社員ではなく、正社員になる見込みもなく、非正規雇用者として一定期間だけ使われる。

 闇バイトを駆使する犯罪グループが東南アジア各国に潜んで、日本に指示を出していることが次々と明らかになっている。フィリピンに潜んでいたルフィグループが関与したとされる広域強盗事件は14都府県で50件以上に及ぶとされるなど、外国から指示を出して、日本で闇バイトで集めた人々に犯罪を実行させるシステムが出来上がっている。

 闇バイトで集められた人々による残虐な強盗事件が多く起きていたことが報じられ、社会に不安を広げた。日本は治安が良いと自慢していたのに、いつどこで誰が襲われるか分からないという現実を見せつけられたのだから、不安は増すばかりか。国外に潜む犯罪グループは「テレグラム」などを使って指示を出しているとされ、日本の警察の捜査は迅速にとはいかない。

 こういう状況を見て「これは使える」と認識した諸外国の情報機関があるだろう。日本人を装ったり、日本人を使ってSNSなどで過激なコメントを発信させ、社会の分断を煽る活動はすでに行われているだろうが、高額の報酬に釣られて犯罪行為も行う日本人が多く存在していて、強盗事件も命じられた通りに実行するという日本人が多く存在することを知って「利用できる」と小躍りしたかもしれない。

 東南アジアから指示して日本国内で闇バイトで集めた人々に犯罪行為を実行させるというシステムがすでに機能しているのだから、そのシステムを諸外国の情報機関が見逃すはずがない。日本国内にデータ収集などを行う支援者を確保しているなら、すぐにでも同様のシステムを構築して強盗などを日本国内で増やす(特殊詐欺には相応のノウハウが必要だが、強盗なら障壁は低い)。

 狙いは、犯罪行為などを増やして社会不安を煽ることだ。社会不安が高まると、政府に対する信頼が低下し、ひいては国力にも影響を及ぼすかもしれない。日本を弱体化させることを狙い、手段を選ばない諸外国の情報機関なら、日本国内における闇バイトを駆使して犯罪をどんどん行わせることも辞さないだろう。