望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

政治献金とキャッシュレス

 2025年4月〜10月に大阪・夢洲で開催される大阪・関西万博で、会場内の売店や飲食店での決済はすべてキャッシュレスにすると発表された。現金は使用できず、クレジットカードや交通系CカードQRコードなどでの支払いに対応し、万博独自の決済アプリも導入する。決済手段を持たない人向けにはプリペイドカードの販売を検討するという。

 日本国際博覧会協会はキャッシュレス決済の全面導入により、▽釣り銭のやりとりがなくなり、レジの待ち時間が縮まる▽店舗で現金を保管する必要がなくなり、防犯対策になるーなど利点を強調したというが、多くの来場者が期待されている万博を契機に日本のキャッシュレス化を加速させる狙いもあると見られている。

 今回のパンデミックを追い風にして飲食店や小売店などでQRコードなどでの決済が日本でも広がり、22年の消費全体に占めるキャッシュレス決済の比率は36%と増えた。だが、欧米は6割ほど、中国は8割以上などに比べると日本のキャッシュレス決済は少ない。経産省はキャッシュレス決済比率を「25年までに40%、将来的には80%を目指す」としており、「消費者の利用拡大と店舗の導入拡大の両方の観点で取組を検討」していた。

 Suicaの導入により鉄道利用者は切符を毎回購入する手間がなくなり、改札を素早く通り抜けることができ、キャッシュレスの利便性を実感した。同様のことが小売店や飲食店の利用に際しても起きており、キャッシュレスの利便性を実感した人々は増えるであろうからキャッシュレス決済は増えこそすれ減ることはないだろう。万博の行われる25年にはキャッシュレス決済は更に普及している可能性が高い。

 キャッシュレス決済には追跡が可能だという利点もある。犯罪絡みの金を出自がわからなくするマネーロンダリングに現金が必要なのは、金の出所を隠すためだ。現金なら追跡は困難で、政府や金融当局は証拠がない限り、そうした怪しい現金があっても差し押さえることはできない。キャッシュレス決済の広がりは政府による金融監視の網を広げつつ強固にする。

 キャッシュレス決済は政治の場においても利点がある。政治献金を全てキャッシュレス決済にすることを義務化すれば、政治とカネの関係が可視化されよう。こっそりと現金の受け渡しがあれば、それは贈収賄とみなされ、責任を問われる。キャッシュレス決済なのだから全て1円単位で記録されるので、透明性は各段に向上する(パー券もキャッシュレス決済)。

 さらに全ての政治に関わる資金をキャッシュレス決済に義務化すれば、流れが記録されるとともにクリーン度が大幅に向上する。官房機密費もキャッシュレス決済になると、ブラックボックスに隠されていた金の流れが可視化され、与野党の国会議員やジャーナリスト、官僚などに配られているなどという疑惑を払拭することができよう。官房機密費は公金であり、たかっていた連中を排除するだけでも日本の政治の透明性は少し向上するだろう。